No.996

題名:“キュン”とする音の秘密
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.972の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて、昆虫におけるフェロモンが、昆虫のときめきとしての”ときめきの果実”の種であるのかは不明であるが、そのフェロモンに相当する「匂い」でもって昆虫の行動に関与していることを示唆した。ここでは、音が”ときめきの果実”となるのかについて、昆虫とヒトとを比較したい。
 昆虫によっては、“きゅん”とする音を羽音によって作り出すことができる。名古屋大学の上川内あづさ博士によれば、ショウジョウバエが「求愛歌」と呼ばれる羽音を使って同種間でコミュニケーションを行い、オスの羽音の「求愛歌」でもって、メスはだんだんオスを受け入れ、自身のオスは求愛行動を活性化させることが分かっている1)。ただし、ヒトの雄が、メスの前で羽根(腕)をばたつかせると、「あんた、バカぁ?」となる可能性が高いが、うらを返せば、「わたしはバカです、あなた、教えて!!」という求愛の言葉であるということになるかもしれない2)。そこは、ヒトのオスの羽根(腕)のばたつかせ方の見せどころでもあろうか。ただし、ショウジョウバエでも羽音による「求愛歌」の聞きわけがあり、それを多く経験することで応答する能力が上がることも指摘されている3)。さらには、ショウジョウバエを発達させる際の種特異的な「求愛歌」の聴覚経験が、成体の「求愛歌」の認識とその後の結果の性的行動の形成にも影響を受けることも報告されている4)。羽根(腕)のばたつかせ方もハエもヒトも何事においても、やはり経験がものをいう。しかしながら、ヒトは羽がない。よって、羽音は出せない。その代わりの音として“キュン”があろうか。
 ここで、大喜利として図を提示する。これは、文献5)にて提示されている胸キュン少女マンガの一コマをポストカードにしたという絵柄であるが、右の王子(男子)が、セリフとともに羽根のばたつかせ行動(ひざますいてキスする)によって、左の姫(女子)はどうなるのかを推測してもらう内容となっている。その答えは、胸キュン、“キュン”という音の発生であろうか。その音自体は、左の姫(女子)から発せられるものではないが、このような場面において、“キュン”という表現がよく似合う。その音の原因は、心臓なのか、それとも、脳内での伝達物質の影響なのかは、まだ判明し

図 胸キュン少女マンガの一コマ5)

ていないが、右の王子(男子)は“キュン”という音を出させる「求愛行動」によって、これを実現している。これは明らかにフェロモンとは異なる、ヒト特有の行動形式に他ならないであろう。

1) https://www.jnss.org/syorei/2012kamikouchi/ (閲覧2018.12.6)
2) http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A2%A4%F3%A4%BF%A1%A2%A5%D0%A5%AB%A4%A1%A1%A9 (閲覧2018.12.6)
3) http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20180320_sci_1.pdf (閲覧2018.12.6)
4) Li X, et al.: Auditory experience controls the maturation of song discrimination and sexual response in Drosophila. elife 20: pii: e34348, 2018.
5) https://item.rakuten.co.jp/bcl-shop/ill-1262/

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ