No.934

題名:音楽における重低音、特にベースの効果
報告者:ゴンベ

 音楽は、空気中の振動が音波となって伝わり、それが外耳・中耳・内耳を介し、内耳にある聴覚受容器である蝸牛によって音波が知覚される。その蝸牛の内部には、弾力のある基底膜と呼ばれる板状の組織があり、その基底膜上には音のセンサーであるコルチ器官が備わっている1)。さらに、蝸牛の内径は根元で太く、先端に行くほど細くなることから、基底膜を振動させる音波による進行波は、低周波音であれば、蝸牛の先端まで進んで最大振幅を取るのに対して、高周波音であれば、蝸牛の基部に近い方で大きく振動させる1)。その差が音波の周波数成分となって判別され、周波数情報となる。これによって、脳内でも様々な周波数の違いを判別し、聴覚中枢神経系によって、音の特徴を得ることができる。脳内の詳細な聴覚中枢神経系の流れについては、紙面の都合上、ここでは示さないが、興味のある方は文献1), 2)を参照していただければ幸いである。
 以上の経緯でもって、ヒトは、音を知り、音楽を聴くことができる。ただし、ヒトの可聴周波数に関して個体差はあるものの、おおよそ20Hz~20kHzとされ3)、他の動物、例えばネコは100Hz~60kHzであり2)、これからによれば、ネコはヒトよりもより高い音を聞いている、聞こえていることになる。ちなみに、マカク(アカゲザル、ニホンザルなどの属)を中心とした旧世界ザルの可聴周波数を調べると、高周波数はヒトよりもよく聞こえている結果が得られている4)。その他の動物の可聴周波数も文献5)にあるが、やはりヒトとは違う音の周波数を感じていることになる。かつてSONYのWalkman WM 501のCMにおいて、周防猿まわしの会のサルであった初代チョロ松は、図のように音楽を聴いているが、チョロ松が高音を好んでいたかは別として、Walkman WM 501には、あえて50Hz付近の低音を最大24dBアップするD・B・B(ダイナミックベースブースト)回路と呼ばれる「重低音」を増強するシステムを装備され、その効果は絶大であったことがよく知られている7)。

図 Walkman WM 501のCM6)

 音楽的に重低音を奏でる楽器は、ベースが筆頭に挙げられる。そして、その音楽的な効果として、ベース音は、人体にアドレナリンを分泌させるなどのユニークな影響をもたらすことがあり、曲のメロディよりも、ベースラインがずれていると「おかしな曲」と感じられる可能性が高くなることも指摘されている8)。また、音楽においてベースは縁の下の力持ちとも言われるが、ヒトは音楽を聞いた時、「神経同調」というプロセスから音楽のリズムを追跡する性質があり8)、重低音カバーするベースの多大なる効果が、ここでも示唆される。

1) 平原達也: 音を聴く聴覚の仕組み. 日本音響学会誌 66: 458-465, 2010.
2) 古川茂人: 音を聞く仕組みを探る. 計測と制御 43: 294-300, 2004.
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/聴覚 (閲覧2018.10.12)
4) http://cognitivens.web.fc2.com/AUD.pdf (閲覧2018.10.12)
5) http://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Research/MediaArt/hearing_range.html (閲覧2018.10.12)
6) https://www.youtube.com/watch?v=YEJ_jN1DxeY (閲覧2018.10.12)
7) http://www.asahi-net.or.jp/~an4t-tkns/taro/walkman/1987.htm (閲覧2018.10.12)
8) https://gigazine.net/news/20151203-brain-love-music-bass/ (閲覧2018.10.12)

 
pdfをダウンロードする


...その他の研究報告書もどうぞ