No.854

題名:毛ガニの生態 -そのⅡ-
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.853の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて毛ガニの漁場や旬を調べるとともに、毛ガニの大きさや体重といったサイズについて調べた。ここでは、毛ガニの成長について詳しく調べたい。
 佐々木潤氏1)によれば、毛ガニの形態学的な観点からその齢期が判別でき、稚ガニであれば、雄雌ともに9齢期までは判別ができる。9齢期までの特徴は、文献1)に詳しく図示されているのでそちらを参照していただきたい。そして、この9齢期は、雄雌ともに生理的成熟を迎える境目となる1)。その後の17齢期までは、甲長と体重のデータから判別できる1)。さらに、オホーツク海沿岸の9齢期以上の個体であれば、毛ガニの定差成長式は、次の式で表すことができる2)。
雄:Ln+1 = 1.016 Ln + 12.415
雌:Ln+1 = 1.055 Ln + 5.476
ここで、Lnは齢期の甲長とする。このようにして、9齢期が区切りとなって、雄雌の成長が変化し、それ以降で雄雌差が生じる。この9齢期から10齢期へ移行する際の甲長も50mm前後で変化がもたらされる。そして、その甲長は雄雌ともに成長の屈折点でもある3)。この屈折点以降で、雌の成長率の低下が著しくなる3)。それを、n+1齢期の甲長とし、成長率(Ln+1-Ln/Ln)との関係でみると、図のようになる。

図 毛ガニの甲長と成長率の関係3)

この図から毛ガニの成体における成長は、雌よりも雄が遅いことがわかる3)。
 一方、毛ガニは成長に伴う脱皮行動がある。先の齢期とは、実は脱皮齢期のことであり、脱皮に伴う成長のことを指す4)。そのため、脱皮による相対的な成長でもあり、これを実際の絶対成長に換算すると、6齢期で満1歳、9齢期で満2歳、10齢期で満3歳ぐらいに相当する2)。成体となった10齢期以降の脱皮周期は未解明であるために、通例で雄では1-2年、雌では約3年の周期と考えられているが2)、第14齢期で7歳というのも過小評価ともされており1)、成体となった以降の脱皮周期については今後の研究が期待される。

1) 佐々木潤, 他: ケガニの齢期判別法と成長. 北水試研報 55: A289, 1999.
2) 三原栄次, 他: 北海道沿岸域におけるケガニの齢期と甲長. 日本水産学会誌 82: 891-898, 2016.
3) 阿部晃治: ケガニの脱皮回数と成長について. BJSSF 48: 157-163, 1982.
4) http://www.kadonaga.com/kanipedia/picture_book/003.html (閲覧2018.7.9)

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ