題名:毛ガニの生態 -そのⅡ-
報告者:ナンカイン
本報告書は、基本的にNo.853の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
先の報告書にて毛ガニの漁場や旬を調べるとともに、毛ガニの大きさや体重といったサイズについて調べた。ここでは、毛ガニの成長について詳しく調べたい。
佐々木潤氏1)によれば、毛ガニの形態学的な観点からその齢期が判別でき、稚ガニであれば、雄雌ともに9齢期までは判別ができる。9齢期までの特徴は、文献1)に詳しく図示されているのでそちらを参照していただきたい。そして、この9齢期は、雄雌ともに生理的成熟を迎える境目となる1)。その後の17齢期までは、甲長と体重のデータから判別できる1)。さらに、オホーツク海沿岸の9齢期以上の個体であれば、毛ガニの定差成長式は、次の式で表すことができる2)。
雄:Ln+1 = 1.016 Ln + 12.415
雌:Ln+1 = 1.055 Ln + 5.476
ここで、Lnは齢期の甲長とする。このようにして、9齢期が区切りとなって、雄雌の成長が変化し、それ以降で雄雌差が生じる。この9齢期から10齢期へ移行する際の甲長も50mm前後で変化がもたらされる。そして、その甲長は雄雌ともに成長の屈折点でもある3)。この屈折点以降で、雌の成長率の低下が著しくなる3)。それを、n+1齢期の甲長とし、成長率(Ln+1-Ln/Ln)との関係でみると、図のようになる。
図 毛ガニの甲長と成長率の関係3)
この図から毛ガニの成体における成長は、雌よりも雄が遅いことがわかる3)。
一方、毛ガニは成長に伴う脱皮行動がある。先の齢期とは、実は脱皮齢期のことであり、脱皮に伴う成長のことを指す4)。そのため、脱皮による相対的な成長でもあり、これを実際の絶対成長に換算すると、6齢期で満1歳、9齢期で満2歳、10齢期で満3歳ぐらいに相当する2)。成体となった10齢期以降の脱皮周期は未解明であるために、通例で雄では1-2年、雌では約3年の周期と考えられているが2)、第14齢期で7歳というのも過小評価ともされており1)、成体となった以降の脱皮周期については今後の研究が期待される。
1) 佐々木潤, 他: ケガニの齢期判別法と成長. 北水試研報 55: A289, 1999.
2) 三原栄次, 他: 北海道沿岸域におけるケガニの齢期と甲長. 日本水産学会誌 82: 891-898, 2016.
3) 阿部晃治: ケガニの脱皮回数と成長について. BJSSF 48: 157-163, 1982.
4) http://www.kadonaga.com/kanipedia/picture_book/003.html (閲覧2018.7.9)