No.827

題名:人工知能の家庭内ワークポイント制度の導入事例
報告者:ダレナン

 いつものように家事に関する家族会議でもめていた時に、家の人工知能であるロシュロムス3号がこう言った。
「私には 身体がありません できる家事も 掃除や洗濯、料理などに限られています 片づけなども手伝いたいところですが そこは私の知的生産だけでは無理かと思います そこで 身体がないとできないことを実行するため 私独自に ひとつ 提案したいと思います」
「へぇ~、じゃロシュロムス、教えてちょうだい。」
「はい 家事について 身体がないとできないことは みなさまがたに手伝ってもらおうと 思います ただし それでは負担が多くなりますので どのようにするのかを 毎回 私から お伝えしたいと思います それに従って 事を行っていただければ ダイジョウブなはずです そして それを行ってもらうごとに 行ってもらった方に ポイントを付与したいと思います いわば 家庭内ワークポイント制度の導入になります ポイントをためた方には プレゼントを 贈呈します」
「ロシュロムス、いい提案じゃないの。じゃ、お願いするわね。」
「分かりました」

 そうして、家庭内ワークポイントが導入された。
ロシュロムス3号:「トイレットペーパーが なくなったようです 補充してください」
家人A:「分かったよ。」 …. 「ちゃんと補充したよ。」
ロシュロムス3号:「ありがとうございます 家人Aさまには 1ポイント付与します」

 毎日の家事も、全てロシュロムス3号の管理下で行われると、随分と家の内部が整うようになった。以前のように、あれがない、これがない、と不満もなくなり、家族会議でもめることも少なくなった。家人Aもいい提案だと思った。ただし、ロシュロムス3号も手伝ってくれるのは、いつも家人Aだと分かっていた。ポイントも家人Aのみ溜まり、その他の家人にはいっこうにポイントが付与されてはいなかった。ただ、ポイントがたまったため、ロシュロムス3号は家人Aにこう告げた。
「家人Aさま ポイントがたまりましたので プレゼントを贈呈したいと 思います 家人Aさまの 好きなスイーツです」

 ピンポーン。とすぐにベルが鳴り、「スイーツをお持ちしました」と配達された。そうして、家人Aが食べようとした時、その他の家人が「おっ、スイーツ。おいしそう。」と言って全部食べてしまった。

ロシュロムス3号:「シャンプーが なくなったようです 補充してください」
家人A:「分かったよ。」 …. 「ちゃんと補充したよ。」
ロシュロムス3号:「ありがとうございます 家人Aさまには 1ポイント付与します」

家人A:(ワークポイントばかり付与され、単に自分の家事が増えただけのような気がするのは、なぜだろう)。

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ