No.825

題名:年齢に伴う音楽の捉え方
報告者:ゴンベ

 絵画やイラストや写真などの様々なアートがある中で、音楽は個人的な影響をもたらしやすい。特に、その音楽への印象や好みは、個人の内的な感情によってもたらされることが多く、その影響は大きい。しかしながら、大きいがゆえに、ある個人が感動した音楽でも、別の個人にすればなんら意味を持たない音楽にもなりうる。その理由として、絵画やイラスト、写真は視覚優位で判断するのに対して、音楽は聴覚優位で判断することから、脳に与える感覚が、視覚>聴覚となって、優位性が違うからであろうか。
1972年での古い報告1)によれば、人間の五官による知覚の割合は、視覚が83%、聴覚が11%、臭覚3.5%、触覚1.5%、最後の味覚が1.0%、であるとされ、やはり視覚優位である。これを、脳の情報処理能力レベルから考えなおしても、視覚がもたらす知覚の処理能力は、かなり大きい負担が強いられていることが伺われる。そのため、視覚から受け取った情報で感動することと、聴覚から受け取った情報で感動するのでは、そこに知覚からの差が生じていてもおかしくはない。ゆえに、音楽はより個人の内的な感情を与える領域を刺激されないことには、脳としても感動が産まれにくいのかもしれない。
 一方、音楽は年齢によっても捉え方が大きく異なる。言い換えると、個人の内的な感情を与える脳の領域が最も活動した年代は、多感な時期であり、そこで感動した音楽は、脳内に「この音楽は感動する」と強固にインプリンティングされていることになる。そのことを示すように、ニューヨークタイムズの社外寄稿者であり、データサイエンチストのSeth Stephens-Davidowitz博士3)は、音楽ストリーミングサービスのSpotifyを利用して、特定の年齢の男性と女性がすべての曲をどれぐらい頻繁に聞くかというデータを解析した。その結果、男性では13~16歳の間に聞いた曲が、その後でも嗜好が維持され、女性では11~14歳の間に聞いた曲が、その後の影響が大きいことが判明した3)。図にそのデータを示す。言い換えると音楽的な嗜好は、11~16歳の多感な時期にすでに決定されやすいことが分かる。同じように、こちらも音楽ストリーミングスサ-ビスのDeezerの調査によれば、人は年を取るにつれて新しい音楽を探さなくなり、昔の曲やジャンルを何度も繰り返し聴く「音楽的無気力」とも言える現象が起き、ほとんどの人は30歳になるまでに新しい音楽を探すことを止めてしまう報告もある4)。これらから考えられることは、ある人が感動した音楽でも、他者にとって結局は

図 年齢における音楽の影響3)

嗜好外の意識をすでに有していることが類推される。言い換えると、音楽は他のアートに比べて、より個人的な嗜好をもつ感情的な側面に、思考が牛耳られている、ことになるのかもしれない。

1) http://q.hatena.ne.jp/1262501872 (閲覧2018.6.11)
2) http://www2s.biglobe.ne.jp/~ganko/kikaku/polytech/1-5.html (閲覧2018.6.11)
3) https://www.nytimes.com/2018/02/10/opinion/sunday/favorite-songs.html (閲覧2018.6.11)
4) http://amass.jp/106231/ (閲覧2018.6.11)

 
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