No.611

題名:あなたの愛車売ってくださいへの疑問と解決
報告者:ログ

 よくCMで流れる車売買に関するフレーズに、あなたの愛車売ってくださいがある。車の売り買いの大手の一つであるカーセブン1)のフレーズでもある。「そうだな…。そろそろ新しい車を買うために…、下取りに出すか…。」と思わざるを得ないフレーズでもある。しかしながら、よく考えると一つの疑問が生じる。愛車なら売れない、はずである。愛車は、詳しく読み解くとたぶんに、愛している車、となるであろうが、愛している車であれば、売ることはできないはずである。
 先頃、日本の岐阜県のとある納屋にてフェラーリ 365 GTB/4 デイトナが発見されたことは記憶に新しい。その発見されたフェラーリ 365 GTB/4 デイトナを図に示す。相当にほこりをかぶっているものの、そこにフェラーリのエンブレムも確認できる。
 このフェラーリ365 GTB/4 デイトナは5台のみ作られたアルミボディのデイトナで、その中でも1台のみのストリートバージョンであり、大変貴重なフェラーリとされる3)。オークションでは1億円以上の落札価格がついており、この状態でも保管されていたということは、まさしく愛車である。オークションにかけられたものの、

図 フェラーリ 365 GTB/4 デイトナ2)

持ち主は愛車として売ることは考えていなかったに違いない。ちなみに、文献3)によると、持ち主は高井真琴氏という方のようである。このようにして、ほこりをかぶろうが、公道で走るか、走らないかは大した問題ではなく、愛車だからこそ、永遠と自らが所有したい、となる。
 さて、本題のあなたの愛車売ってくださいであるが、愛車は本来売ることができない、永遠の所有物である。そのため、あなたの愛している車売ってくださいは、フレーズとして誤った解釈になろう。そこで、このあなたの愛車売ってください、を正確なフレーズとして解釈するならば、あなたが(かつて)愛したであろう車を売ってください、となるに違いない。すなわち、今は愛していない。
 「うわぁーい。新車だ、新車だ。」との喜びもつかの間、年月が経つとそこらじゅうにボロが目立ち始め、新型の車に目移りする。そこで我慢するも、ひとたび故障などすることによって、愛している車は、愛していた車となり、あなたの愛車売ってください、売りましょう、となる。もはや完全には愛してはいない。
 人の愛は移りゆくあやうい感情である。ずっと愛されていたいものの、人として故障が多くなれば、愛されなくなることもしばしばである。フェラーリのエンブレムの如く、跳ね馬のある人ならば、生涯愛されるかもしれない。しかしながら、現実は、エンブレムを持つ人に至るまでには、なかなか難しい。多くの人は、エンブレムなしにこの世を去る。筆者もその一人であろう(か)。

1) https://www.carseven.co.jp/ (閲覧2017.9.21)
2) https://www.facebook.com/RMSothebys/photos/pcb.10155529205303815/10155529180098815/?type=3&theater (閲覧2017.9.21)
3) http://happy3711.com/2017/08/26/post-1582/ (閲覧2017.9.21)

 
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