No.515

題名:人工的な構造物の欠点に関する一考察
報告者:エゲンスキー

 人の知能といえば、人が他の動物と異なる進化を選んだ自然界がもたらした一つの結果となる。そのため、人の知能は、自然知能の最たるものとも言い換えることができようか。これに対して、人工的な知能は何かと言えば、昨今の人工知能に他ならない。その人工知能は、人の神経ニューロンを摸した形のニューラルネットワークで構造化され、現在、最も進んだニューラルネットワークの形式であるDeep Learningも、人が持つ脳の階層性を摸し、その構造から深いニューラルネットワークとも言われている1)。しかしながら、人の脳も、元々は全部で6つの階層構造で形作られている2)。この神経ネットワークの複雑さが、学習、記憶、運動、認知などの高度な情報処理を可能としている2)。このことから、やがて人工知能が人の持つ自然知能を越えるかもしれないという技術的特異点(Technological Singurality)を迎えたとしても(報告書のNo.129も参照)、人工知能の根底は自然知能を持つ人の神経ニューロンの構造の模倣から生じ、その特異点として考えられる学習、記憶、運動、認知などの情報処理は、自然知能と人工知能で異なった進化を遂げる可能性もある。そもそも、ここにおいて、自然と人工には、自己創発という点でどうしても相容れない隔たりが存在する。これを建築の観点から見直すと、例えば、最も自然に習い、それを人工構造物として空間を作りあげたアントニオ・ガウディでさえ、この問題は大いなる難問であったに違いない。アントニオ・ガウディが残した名言に、

The beautiful shape is stable structurally. I have to learn the structure from nature.
(美しい形は構造的に安定している。構造は自然から学ばなければならない。)

とあるが3)、ガウディが人工的に創り上げた構造物は決して自己創発しない。ガウディの偉大なる構造物の一つでバルセロナのグラシア通りにあるガウディが54歳の時に建築設計したカサ・ミラ(Casa Milà)4)のアトリウムは、図が示すように、自然の構造を見事に取り入れている。生き物のようでもある。しかしながら、これを創造したのはガウディであり、作り上げたのは当時の建築家である。自然が創り上げた訳ではない。ガウディは深く自然の造形を見つめ、構造物の形態を自然から学んだものの、自然自らがカサ・ミラを作り上げることは、偉大なる建築家ガウディをもってしても実際にはあり得ない。当たりえ前といえば、当たり前の結論でもある。
 このような建築に相当する人工的な構造物は、人が進化の過程で居住として自然の掘ら穴の価値の見出しから始まり、その構造物がやがて人工への居住物へのヒントとなったであろう。しかしながら、自然の掘ら穴は自己創発に基づくが、人工の掘ら穴は自己創発には基づかない。人工的な構造物の欠点は、まさにそこにある。

図 カサ・ミラのアトリウム5)

1) https://www.slideshare.net/yoshihisamaruya/dnn-deep-learningv10 (閲覧2017.6.21)
2) http://www.brain.riken.jp/jp/youth/know/structure (閲覧2017.6.21)
3) https://spirituabreath.com/anntoniogaudhi-meigenn-13929.html (閲覧2017.6.21)
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/カサ・ミラ (閲覧2017.6.21)
5) ttps://ja.wikipedia.org/wikiファイル:Casa_mila_atrium.jpg (閲覧2017.6.21)

 
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