No.2951

題名:今日のお題は、「朝のひかり」
報告者:ダレナン

(No.2950の続き)
旅先の小さな港町のホテル。
窓から差し込む朝の光が、カーテンの隙間からゆっくりと部屋に広がっていた。

ベッドの上で、彼女はまだうとうとと夢の中にいた。
その寝顔が、信じられないほど穏やかで、愛おしかった。
髪の先が枕に散らばっていて、頬に少しだけ跡がついている。
そんな何気ない姿に、どうしようもなく心を掴まれた。

僕はそっとベッドから抜け出し、コーヒーを淹れた。
カップから立ちのぼる湯気と、港から届く潮の香り。
それが、朝を特別なものにしていた。

少しして、彼女がふと目を覚ました。
まだ眠たそうな目で、僕を見つめて一言。

「ありがとう」

たったそれだけの言葉。
でもその時、彼女の瞳に、確かに“うれしさ”がにじんでいた。
僕は照れ隠しのように笑って言った。

「僕こそ、うれしかったよ」

それは、特別な会話じゃなかった。
どこにでもあるような、短い言葉のやりとりだった。

でも、不思議なことに——
その朝の光と、彼女の声と、ありがとうの温度は、
今も心の中でやわらかく灯っている。

 
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