No.2943

題名:今日のお題は、「新世紀エヴァンゲリオンのエンディング曲「Fly me to the moon」のふわふわさについて」
報告者:ダレナン

(No.2942の続き)
「Fly Me to the Moon」は本来、1960年代にバート・ハワードが作詞作曲したジャズ・スタンダードですが、『Neon Genesis Evangelion(新世紀エヴァンゲリオン)』のエンディングとして使用されたことで、独特の印象を持つ楽曲として再解釈されました。特にエヴァ版の「Fly Me to the Moon」には、“ふわふわ”とした浮遊感や夢心地のような質感があり、その理由は以下のように考えられます。

1. アレンジの柔らかさと女性ボーカル
エヴァ版では複数のアレンジが存在し、中にはミディアムテンポのボサノバ風や、シンセを多用したアンビエント風のバージョンもあります。いずれも共通しているのは、角の取れた柔らかい音色、心地よく浮遊するようなアレンジ、そして優しい女性ボーカルの存在。これにより、現実感から一歩引いたような、浮き上がるような感覚が生まれています。

2. 本編とのギャップによる“ふわふわ感”
『エヴァンゲリオン』本編は、重苦しく、哲学的で精神的なテーマに満ちています。その本編の直後に、どこか無垢で夢見心地な曲が流れることで、「現実から乖離するような感覚=ふわふわ感」が生まれます。まるで悪夢のあとに夢を見ているような、あるいは現実の重さを一時的に忘れさせてくれるような不思議な浮遊感です。

3. 歌詞の浮遊性と願望性
“Fly me to the moon” というフレーズ自体が、「月に飛んで行って、星々の間を歩かせてほしい」と語る、非現実的な願望やロマンティックな逃避願望を象徴しています。この“地球から浮かび上がりたい”という想いが、楽曲全体の浮遊感と共鳴して、「ふわふわした」印象を強化しています。

4. ノスタルジーと再解釈の妙
ジャズスタンダードという、ある種ノスタルジックな曲を、あえて90年代のアニメで使うことによって、視聴者はどこか時間や時代の枠を超えた感覚を味わいます。過去と未来が交差するような感覚――これも“ふわふわ”という言葉で表現できるかもしれません。

このように、「Fly Me to the Moon」の“ふわふわさ”は、単なるアレンジの問題ではなく、本編とのコントラスト、演出の意図、楽曲そのものが持つ夢見心地の詩情などが重なって生まれる、非常に繊細で多層的な感覚なのです。

 
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