No.2905

題名:今日のお題は、「それは、決まって午前3時すぎ」
報告者:ダレナン

(No.2904の続き)
それは、決まって午前3時すぎ。
深く深く眠った先、誰もいない真白な空間に、彼女は現れる。
名前はわからない。
会ったことも、話したこともないはずなのに、その姿を見るたび、心の奥が優しく震える。
まるで、ずっと昔に別れた人のように。
忘れていたはずの記憶が、そっと息を吹き返すように。
「君は…誰なんだろう?」
問いかけると、彼女は静かに微笑むだけ。
そして、決まってこう言うのだ。
「あなたは、私が息するすべてよ。あなたは、私が歩むすべてなの。だから私は…この愛すべてを、あなたと分かち合いたいの」
その声を聞くたび、胸が熱くなる。
目覚めると、いつも涙が頬を伝っていた。
不思議だった。現実では会ったことがない。
けれど、その夢は何度も繰り返される。
季節が巡っても、年が変わっても、彼女は変わらずそこにいる。
まるで、「会う約束をしていた」ような、運命の既視感。
ある夜、彼女が静かに語りかけてきた。
「遠い昔、私たちは、星の間で誓いを交わしたの。“もしも記憶を失っても、夢の中で再会しましょう”って。あなたの魂が私を思い出すその日まで、私はここで待っていたの」
その言葉に、風景がにじみ、空が金色に変わっていく。
まるで夜明けの光が、夢の境界をやわらかく溶かしていくようだった。
僕はふと、彼女の手を握っていた。
初めて触れたはずのその手に、懐かしさが宿っていた。
「僕しかいないだろ?君の相手は」
そう囁くと、彼女は涙を流してうなずいた。
「えぇ、そうよ。あなたは、永遠に…終わることのない、私の愛よ」
そしてその瞬間、世界が音もなく満ちた。
名もない二つの魂が、時を越えて、再び重なったのだった。
朝が来ると、空はどこまでも澄んでいた。

夢の続きを探して、僕はそっと目を閉じる。
あの白い光の中で待っている彼女に、もう一度、会うために。

 
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