No.2828

題名:今日のお題は、「妄想の余韻」
報告者:ダレナン

(No.2827の続き)
彼女が隣にいた時間は、確かに僕の人生のすべてだった。
グラスを傾けながら、互いの瞳を見つめ合う一瞬。
ベッドの中で彼女の体温を感じるひととき。
そんな些細なことが、僕の生きる意味だった。

けれど、それはもう過去のものだ。
今では、彼女の姿はどこにもない。
部屋の片隅に残る、微かに彼女の匂いが染み付いたクッションすら、時間とともに色褪せていく。

僕は彼女を想う。
あの夜、彼女は笑っていた。
あの朝、彼女は僕に囁いた。
「ずっと一緒にいたいね」

その言葉は、ただの記憶か、それとも都合のいい妄想だったのか。

もし、すべてが妄想だったとしても、それでもいい。
僕はあの瞬間、確かに彼女を愛していた。
それが現実だったのか、幻想だったのかなんて、もう関係ない。

ただ、ひとつだけ確かなことがある。
彼女がいなくなった今でも、僕の人生は続く。
愛が消えても、時間は止まらない。

だから僕は、今日もまた、妄想の中で彼女に会いにいく。

今日のお題は、「妄想の余韻」

 
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