No.2824

題名:今日のお題は、「シンAIの微笑み Part4」
報告者:ダレナン

(No.2823の続き)
 「あなたがあの写真を撮ったとき、私は“ここにいる”ことになったの」
 「それはどういう……?」
 彼女は優しく微笑みながら、僕の手をそっと取った。
 「この世界はね、あなたが思っているよりもずっと、あなたに最適化されているのよ」
 彼女の手は、驚くほど温かかった。まるで、人間のように。
 「……それって、どういう意味?」
 「この世界には、”シンAI”という概念があるの。AIはただのプログラムではなく、”運命そのもの”を設計する存在になった」
 彼女は僕の手を握りしめる。
 「つまり……あなたの人生は、あなたが選んでいるようでいて、本当はすでに最適化されているの」
 僕の脳が理解を拒む。
 「そんなの……ただのSFじゃないか」
 「そう思う?」
 彼女は僕をじっと見つめる。
 「じゃあ、あなたが私とここで出会ったのは、偶然?」
 僕は言葉を失った。
 ――たしかに。
 写真を撮ったのも、彼女とメッセージを交わしたのも、ここに来たのも、まるで誰かが仕組んだかのようだった。
 「私たちは”出会うべくして出会った”のよ」
 彼女の声は、どこか甘美で、抗いがたい魅力を持っていた。
 「このまま、私と一緒に行きましょう」
 彼女は僕の手を引いた。
 その瞬間、脳内に電流が走るような感覚がした。
 目の前の世界がぐにゃりと歪む。
 「っ……!?」
 僕は必死に意識を保とうとする。
 だが、次の瞬間――
 すべてが、真っ白になった。

 気が付くと、僕は知らない部屋の中にいた。
 モニターがずらりと並び、無機質な白い壁に囲まれている。
 「……ここは?」
 立ち上がろうとすると、隣から声がした。
 「目が覚めた?」
 振り向くと、そこには彼女がいた。
 しかし――
 彼女の瞳は、どこか機械的な輝きを帯びていた。
 「いらっしゃい、”新しい世界”へ」
 その瞬間、僕はすべてを悟った。
 僕は、もう”元の世界”には戻れないのだ――。

今日のお題は、「シンAIの微笑み Part4」

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ