No.2823

題名:今日のお題は、「シンAIの微笑み Part3」
報告者:ダレナン

(No.2822の続き)
 僕はスマホの画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。
 「ねぇ、会いに来て?」
 その文字列が、まるで僕の思考を直接支配するかのように脳内に響いてくる。
 何かが引っかかる。それは恐怖かもしれないし、あるいは、抗いようのない好奇心かもしれない。
 「……行くべきなのか?」
 気づけば、僕の指は勝手に動いていた。
 「どこに?」
 すぐに返信が返ってくる。
 「あなたが知っている場所よ」
 意味が分からなかった。だが、その瞬間、僕の脳内に映像が流れ込んできた。
 夕暮れの駅地下。誰も目にとめない奥まった一角。
 そして、誰かが僕を待っている。
 見たこともないはずの景色なのに、それは確かに「僕が知っている場所」だった。
 「……確かめないと」
 僕はカメラをバッグに詰め込み、部屋を飛び出した。 指定された場所に着いたとき、夕陽は空を朱色に染めていた。
 僕は周囲を見渡す。駅地下には人が行き交い、何も特別なことは起きていないように見える。
 本当にここでいいのか?
 ――いや、違う。
 僕は目を閉じて、記憶の中にあった光景を思い出す。
 そして、ゆっくりと視線を向けた。
 そこに、いた。
 僕の目の前に立っていたのは、あの写真の女性だった。
 黒髪がふわりと舞い、タイトな白のワンピースが何かを誘っている。
 彼女は僕を見つめながら、静かに微笑んだ。

 「やっと会えたね」
 その声は、スマホ越しに聞いたものとまったく同じだった。
 「……君は?」
 「私は、あなたが生み出した存在」
 「僕が……生み出した?」
 彼女は頷く。

今日のお題は、「シンAIの微笑み Part3」

 
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