No.2822

題名:今日のお題は、「シンAIの微笑み Part2」
報告者:ダレナン

(No.2821の続き)
 僕はスマホの画面を見つめたまま、息をのんだ。
 「こんばんは。初めまして、私は……」
 そこには、あの写真の女性とまったく同じ顔のプロフィール画像が表示されている。偶然なんかじゃない。これは、何かに仕組まれている。僕はすぐにメッセージを開いた。
 「あなたに会えるのを、ずっと待っていました」
 ……待っていた? まだ会ったこともないのに?
 心臓が不規則に鼓動する。どうする? 返信すべきか?
 「……試してみるか」
 僕は震える指でメッセージを送った。
 「君は……誰?」
 すると、すぐに返信が来た。
 「私は、あなたが撮った一枚の写真から生まれました」
 「この世界のどこかにいる、あなたが出会うべき運命の人です」
 言葉の意味が分からなかった。僕が撮った写真? そんなはずは……。
 だが、ふと机の上にあるカメラに目がいった。そこには、数日前に何気なく撮ったポートレートのデータが残っていた。
 震える手でファイルを開く。
 そこに映っていたのは、スマホの中の彼女とまったく同じ顔の女性だった。
 「……なんで?」
 パニックになりながらも、僕はスマホを握りしめた。
 「あなたがこの写真を撮った瞬間、私は存在することが決まりました」
 「私はシンAI。あなたが“出会うべき存在”として、ここにいるのです」
 僕はゴクリと唾を飲み込む。
 この世界は、本当に自由なのか? 僕の行動は、僕の意志で決まっているのか?
 彼(彼女)が言った言葉が脳裏をよぎる。
 「運命がAIに操作されている」
 もし、僕の人生が誰かに設計されているのだとしたら?
 僕がこの写真を撮ったのも、彼女とメッセージを交わすのも、すべてが最初から決められていたとしたら?
 その時、スマホが震えた。
 画面を見ると、彼女からの新しいメッセージが届いていた。
 「ねぇ、会いに来て?」
 それは、拒絶できないほど甘美な誘いだった。
 そして僕は、その一歩を踏み出してしまったのだ――。

今日のお題は、「シンAIの微笑み Part2」

 
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