No.2794

題名:今日のお題は、「野心と恋の狭間でPart5」
報告者:ダレナン

(No.2793の続き)
「達也くん」

社長の低い声が響く。その表情は、今まで僕に向けていた温厚なものではなく、鋭く本質を見抜くような眼光だった。

「君は、何を目的に美月に近づいた?」

背筋が凍りついた。

一瞬、何を言えばいいのかわからなかった。だが、僕の沈黙がすでに答えになっていたのかもしれない。

「……すべて、見抜かれていたのか」

社長は深く息をつき、デスクに肘をついた。

「いいかね、達也くん。私はね、会社を任せる人間を探していたんだ。しかし、それは単に能力がある人間ではなく……本当に信頼できる人間だ」

社長の言葉に、僕は何かを悟った。

美月との出会いも、恋に落ちたと錯覚した瞬間も、すべては社長の計画の一部だったのか?

僕の野心が試されたのではない。僕という人間そのものが、最初から見極められていたのだ。

「お前の能力は認める。だが、この会社は、お前のような人間に渡すつもりはない」

社長の言葉は、僕にとって最大の敗北宣言だった。

そして、美月は静かに僕を見つめ、最後にこう言った。

今日のお題は、「野心と恋の狭間でPart5」

 
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