No.2793

題名:今日のお題は、「野心と恋の狭間でPart4」
報告者:ダレナン

(No.2792の続き)
美月は、桜の花びらを指で挟み、静かに微笑んだ。その笑顔が、やけに冷たく見える。

「文字通りの意味よ。私はずっと、父の作った会社に縛られて生きてきた。けれど、本当にこの会社が私の人生そのものなのかって、ずっと疑問だったの」

僕は動揺を隠しながら、美月の言葉を待った。

「だからね、達也さん。もし、あなたが本当に私を愛してくれているなら……私が会社を継がなくても、変わらず一緒にいてくれる?」

心臓が嫌な音を立てた。

これは、試されている。

美月は、僕の野心を見抜いている……いや、最初からすべてをわかっていたのか?

僕の心の奥底を覗き込むような彼女の瞳。そこには、揺るぎない確信があった。

「……美月。君が会社を捨てても、俺の気持ちは変わらないよ」

僕はそう言うしかなかった。言葉を絞り出すように、しかし決して疑われぬように。

美月は、ふっと目を細めた。

「……そう」

その一言には、何かが込められていた。僕を信じたのか、あるいは、やはり試していたのか。

その日の夜、僕は社長に呼び出された。

社長室に入ると、そこには社長と……美月がいた。

今日のお題は、「野心と恋の狭間でPart4」

 
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