題名:今日のお題は、「彼女へのQuestions in a World of Blue」
報告者:ダレナン
(No.2763の続き)
霧雨の降る夜、僕は一人、バーのカウンターでグラスを傾けていた。氷が溶けかけたウイスキーを揺らしながら、目の前のグラスの向こうに彼女の幻影を見ていた。
白いドレスに身を包み、少しだけはにかんだように微笑む彼女。あの頃と何も変わらない姿で、僕を見つめている。けれど、幻影はどれほど強く願っても、指の隙間をすり抜けるように消えていく。
ジュークボックスから流れ出したのは、Julee Cruiseの「Questions in a World of Blue」。僕は息をのんだ。 まるで、誰かが僕の心を見透かしていたかのようなタイミングだった。
彼女とは、五年前に出会った。
冬の終わり、薄氷の張った湖のほとりで。
僕はカメラを手にしていて、彼女は一冊の本を持っていた。
初めて会話を交わした時から、彼は彼女に強く惹かれた。
ゆっくりと時間をかけて距離が縮まり、やがて二人は一緒にいることが当たり前になった。
僕は思っていた。
このまま、彼女とずっと一緒にいるのだろうと。
それは、決して叶わない夢だとも知らずに。
彼女が去ったのは、夏の終わりだった。
「ごめんね」と言った彼女の顔は、ひどく悲しそうで、どこか懐かしい景色のようだった。
彼女には、別の人生があった。
それを知っていたはずなのに、僕は何も言えなかった。
ただ、風が彼女の髪を揺らすのを見ていた。
そして、彼女は去った。
結婚式の招待状が届いたのは、それから半年後のことだった。
僕はそれを破ることも捨てることもできず、ただ机の引き出しにしまい込んだ。
「Questions in a World of Blue」が流れる。
歌詞が僕の心に問いかける。 「Where is the love we once knew?」
僕は静かに目を閉じた。
どれほど彼女を求めても、どれほど時間を戻したいと願っても、もう彼女は僕の隣にはいない。
それでも、夜が深まるたびに、僕は問い続けるのだろう。
この青の世界で、答えのない問いを。
今日のお題は、「彼女へのQuestions in a World of Blue」