No.2706

題名:今日のお題は、「夕映えの指」
報告者:ダレナン

(No.2705の続き)
町はずれの静寂に溶ける舗道
西陽が長く影を引きずるころ
頬を撫でる風に誘われて
彼女の指がそっと髪を梳いた

燃えるような夕陽のかけらが
指のあわいにきらめいて
揺れる髪の隙間から
茜の光がこぼれ落ちる

うなじに沿う影の淡さ
肩越しにのぞく余熱の残像
風に解かれた瞬きの奥で
静かな炎が揺れている

言葉はいらない
ただ、そのしぐさに宿るもの
それは夕映えよりも儚く
夜の訪れよりも甘やかで

やがて沈む陽の向こうへ
彼女はまた歩き出す
指先に残る光をひとつ
そっと夜へと手渡しながら

今日のお題は、「夕映えの指」

 
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