題名:今日のお題は、「夕暮れの船上で」
報告者:ダレナン
(No.2681の続き)
オレンジ色の光が海を染め、波間に揺れる光の帯がどこまでも続いている。遠くでカモメが鳴き、潮風が頬をかすめるたび、彼女の髪がふわりと舞う。
「…綺麗。」
彼女がぽつりと呟く。
「本当に。」
僕はそう返したけれど、目に映るものは夕焼けではなかった。
彼女の横顔。
風に揺れる髪を、そっと耳にかける指先。
金色に染まった瞳が、まるで宝石のように輝いている。
「ねえ、何か言ってよ。」
くすっと笑いながら、彼女が振り向く。
「…言葉にならないんだ。」
彼女は不思議そうに瞬きをする。
「綺麗すぎて。」
その一言で、彼女の頬が夕焼けと同じ色に染まった。
──ジャックも、こんなふうに見とれたのかな。 ローズが船首に立ち、風を浴びるその姿を。 彼も、ただ息をのんで見つめることしかできなかったのかもしれない。
「ふふ…なにそれ。」
彼女が少し照れたように笑う。
「だって、本当にそう思ったんだよ。」
その瞬間、ふわりと潮風が吹いた。彼女は目を閉じ、両手を広げる。
「まるで映画みたい…」
俺はそっと、彼女の後ろに立った。 そっと、彼女の手を握る。
「ねえ、ジャック」
「ん?」
「絶対に、手を離さないでね」
彼女がくるりと振り返り、笑う。
「もちろん。」
沈む夕日が、僕たちを金色に包み込んでいた。 今日のお題は、「夕暮れの船上で」