No.2676

題名:今日のお題は、「隣にいてほしい夜」
報告者:ダレナン

(No.2675の続き)
 金曜の夜、僕とちなつは馴染みの居酒屋で乾杯をしていた。友達の延長線上で付き合い始めた僕たちは、まだ少しぎこちなかったが、その関係の変化が心地よくもあった。
 「この焼き鳥、美味しいね!」
 ちなつが笑顔で串をかざす。
 「うん、やっぱりあの店員さんのオススメは正解だね」
 僕も笑顔を返す。時計を見ると、まだ夜は始まったばかりだった。
 「ねぇ、この後バーに行かない?」とちなつが提案する。
 「いいね。ちょっとおしゃれなところに行こうか」
 バーに移動すると、店内は落ち着いたジャズが流れ、柔らかな照明が二人を包み込んでいた。カウンターではなく、あえてテーブル席を選んだのは、ちなつが少しでも僕と向かい合って話したかったからかもしれない。ちなつはフルーツカクテルを、僕はウイスキーを頼む。グラスを軽く鳴らして乾杯すると、彼女は頬を赤らめながら微笑んだ。
 「ねぇ、こうやって二人で飲むのって不思議だよね」
 ちなつが少し潤んだ目でこちらを見つめる。
 「そうだな。でも、なんか安心するよ」
 僕も酔いが回り始めて、自然と素直な言葉が出た。
 静かな空間の中、ふとちなつが視線を落として、小さな声で言った。

 「ねぇ…今日、泊まってもいい?」
 その言葉に心臓が大きく跳ねた。酔った勢いだけではない、彼女の真剣な瞳がそこにあった。
 「えっと…もちろん、いいけど…」
 僕の声は少し震えていた。
 ちなつは顔を赤らめながらも、テーブルの下でそっと僕の手を握った。
「一緒にいたいから…だめかな?」
 その言葉に、僕の中で何かが温かく広がっていくのを感じた。
「だめなわけないだろ。俺も、一緒にいたいよ」
 ちなつは照れくさそうに笑い、僕たちは再びグラスを合わせた。
 その瞬間、ただの友達だった関係が、本当の意味で恋人になったのだと実感した。
 バーを出て、夜風が心地よく感じる中、ちなつは僕の腕にそっと寄り添った。
「なんか、こうやって帰るのもいいね」
「そうだな。これからも、こんな夜をたくさん過ごせたらいいな」
 彼女は満足そうにうなずき、僕たちはゆっくりと歩き出した。この夜が、僕たちの新しい始まりになることを、二人とも薄々感じていた。

今日のお題は、「隣にいてほしい夜」

 
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