No.237

題名:フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」における推定上面図からのポージングの一仮説
報告者:アダム&ナッシュ

 本報告書は、基本的にNo.236の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 No.236にて「真珠の耳飾りの少女」における構図について検討した。その結果、黄金分割や黄金三角、対角線に沿った構図であったことが判明した。ここでは、視点を変え、「真珠の耳飾りの少女」を描く際にフェルメールがなぜこのようなポージングを選んだかについて、推定の上面からの図にて検討し、フェルメールの思想として、一仮説を立てたい。
 「真珠の耳飾りの少女」を見ると、ポージングに際して身体の角度などを推定することができる。その角度には、視線・頭部・体幹の角度、そして、光の入射角度がある。これを模式的に示すと、図のように仮定できる。ここで、赤色は視線の角度、緑色は頭部、体幹の角度、黄色は光の入射角度を表す。ただし、これらの角度は絵の様子からの推定であるために、観る人によっては異なる見解が得られるかもしれない。そこは、一仮説としてお許し願いたい。さらに、ここで、No.236の黄金分割と黄金三角の交点であり、No.235の鑑賞の際の焦点となる目と目の間を中心とした点線の様な円を追加する。すると、面白いことが発見できる。視点の先とその円の交点、頭部の方向とその円の交点、光の入射方向とその円の交点の各角度が45°に相当し、顔の方向を中心として、

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図 「真珠の耳飾りの少女」の推定上面図

ポイントとなる角度が均等に割りつけられてポージングされていたことが理解できる。これらの意味するところは、フェルメールは身体への光による反射の状況を見ながら、かつ、視線に対しても光の反射との関係をうまく割りつけ、単純な振り返りのポージングを選んだ訳ではなく、相当なこだわりをもって、モチーフとしてこれを選択していたことが推測されるのである。
 フェルメールの作品の特徴は、No.234に挙げた3つである。しかしながら、この「真珠の耳飾りの少女」には、これに加えて、
① 焦点とぼかし方に着目する(No.235)
② 構図に着目する(No.236)
③ ポージングに着目する
の3つも合わせて持っていることが、ここで推測された。
 フェルメールは寡作な画家であった。その理由は、単に一つの絵を仕上げるだけではなく、このように科学的に、かつ、芸術的に、それらをうまく併せ持つように、絵を描いていたからなのかもしれない。

 
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