No.2157

題名:仕事上のサバイバル
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.2156の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 無人島のサバイバルは楽園ではないものの、3つの青いサンゴ礁を通してそれは、楽園であるかのように思えた。が、実際は楽ではない。エドがそれを明らかにした。60日間の何もないところからのサバイバルと2泊3日の表向きサバイバルという企画の島旅行では根本的に趣旨が異なる。生きるか死ぬかの60日間と単なる気晴らしの2泊だろう。
 「秘密のアイランド。無人の孤島で過ごす一家族限定のサバイバルな2泊3日」な企画は、間違いなく楽園だろうな。そのテイに、エドの生きるか死ぬかの努力とは異なり、僕はなんだか、どうでもいいようなぬるま湯に浸かっている。
 でも、いつ終わるか分からない果てしない過酷なイベント会社時代、新型コロナウイルスによるごたごたに巻き込まれてにっちもさっちもいかなかったあの時代、それは熱湯風呂に浸かっている時代でもあった。僕にとってはそれは果てしない仕事上のサバイバルでもあった。ただ、エドと決定的に違うのは、そこには死はあっても、生はなかった。エドは間違いなく生き抜くことに、性を放出している。エドの笑顔はそのすべて語っていた。

 君はもう一度熱湯に浸りたいか?
 NO
 長い時間そこに浸かれるのか?
 NO

 浸かれないで疲れた、それが過去の僕の本音だった。会社がつぶれ、それでよかった…。
 ぬるま湯は僕を適度に温めてくれる。熱湯のようにやけどすることもない。なんだか今更、僕の生きざまが欠けていても、僕には家族という楽園がある。その楽園を僕は守り抜かなければならない。
 寝室を覗くと、風邪で寝込んでいるちなみの横に、舞衣子も安心しきった顔つきで眠っていた。ちなみの額には熱さまシートが貼られ、頭の上には水筒が置かれてあった。ちなみに心配して、舞衣子が準備したものだろう。優しい妻だった。僕はそのままそっとドアを閉め、安堵しながらリビングに戻った。
 スマホを何気なく検索すると、旅行会社の「秘密のアイランド。無人の孤島で過ごす一家族限定のサバイバルな2泊3日」の企画があった。この前、舞衣子が二人でのツアーとして申し込んだ企画だった。
 詳しく見ると、そこには{水、食料はわずかばかり準備してあります。ただし、一人当たり1日分です}と書かれてあった。そして、島の地図もあり、上陸した反対地点に水場があることが分かった。たぶん、旅行会社の意図としては、水が欲しければ、島の反対側まで歩いて辿り着いてください、ということがすでに読めた。地図にはフルーツのありかも示されていた。ということは、やはり、これはサバイバル”的”な企画である。真のサバイバルではない。旅行会社としても、ツアーの客に死なれては困る、ということだろう、結局のところ。
 それでも、わくわくした。死のみの仕事上のサバイバルでない、生のサバイバルが”的”であっても、そこには生きるための楽園があるように思えた。

 
pdfをダウンロードする


...その他の研究報告書もどうぞ