No.2092

題名:「それって、決まってることだから…」
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.2091の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 夢の中のジェニファーはあの当時と変わらず、僕にその美しさを語っていた。
 スレンダーなのに女性美を体で表すような、でるとこはでて、ひっこむところはひっこみの身体的な均整がとれ、そして何よりもアジアだけでなく若干スウェーデンかどこか北欧の血もわずかに混じっているらしい茶色の髪と淡い青みを帯びた目は、何とも言えない雰囲気を彼女にもたらしていた。それがジェニファーの外観的な魅力でもあった。が、彼女は同時に所謂頭の回転力がよく、相手からの求める答えをスッと回答するような機転の利く不思議な内面的な魅力にも溢れていた。彼女と話すことで輝点が利く。話し相手が一瞬レベルが上がったように感じる。そんな点を帯びさせてしまう能力が彼女には備わっていた。
 僕とトニーと起業したベンチャー企業のインター・アドベンチャーは、多くの関係者を引きつけたのは、今から思えばまさに彼女のその訴求力に源があったのかもしれない。僕たちの能力ではかなわない、それはジェニファーだけが持つ孤高の魅力であった。
 僕は一時、なぜそんなジェニファーが、僕を好きになったのか聞いたことがある。でも、彼女の返事はいつもこうだった。
 「それって、決まってることだから…」
 トニーも、そんな彼女に対しては、「長老曰く、彼女はそんな生まれつき特別の星の持ち主の人らしいんだ。むかしから…。その生なる星は、僕にだけでなく一族の誰にもはかなわない…。千年に一度の聖なる星の持ち主らしい…」と言っていたことを思い出した。

 「ねぇ、ジェニファー」
 僕は、横に座る軽くジェニファーに話しかけた。その時、軽く僕の方に首を振ったときに、耳のピアスがとてもきらきらと輝き出し、それがジェニファーの魅力を一段と増していた。
 「なに?」
 「そのピアス。とっても似合ってる」
 「ヒデーィキ。ありがとう…♡」

 その瞬間、僕は間違いなく運命づけられたようにジェニファーに恋心を抱いた。いや、実は、すでに彼女のすべてに吸い込まれていたのかもしれない。彼女の魅力を、僕は、はっきりとそこで感じていたのだった。
 同時刻においてClub内の演奏はいつのまにやらGerry Mulligan Sextetが奏でたPrelude In E Minorへと変化した。そして僕は、その曲の変化に咄嗟にJane Birkinが脳裏に浮かんだ。
 彼女を見つめ、自然と僕は彼女の手を握った。
 (そうだ。ジェニファーはJane Birkinのような魅力にあふれている人だったんだ、Jane B. (D’Après Un Prélude De Chopin French TV 1969 Vinyl 33 Rpm Remastered))
 僕は、その時、そう確信した。

 
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