No.2090

題名:他人の空似だろう。
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.2089の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 そういえばスーパーの駐車場にAudiを止めた時、窓越しから知っている人を見かけたな。あれは…、そう。八度まもるの妻の八度美幸だ。しかも、若い男性と手を繋いで歩いていた。ということは、彼は…。いや違う…だろう。この前、話を伺っている時にはとてもそんな感じの奥さんには見えなかった。たぶん、他人の空似だろう。

 他人の空似だろう。
 他人の空似だろう。

 でも、もし本当にあれが八度美幸だとしたら、八度まもるの今ある症状は八度美幸の何らかの行動にも惹起された可能性も否定できない。彼がその事実(なんらかの形で八度美幸がその若い彼と特別な関係にあること)を知っていたならば、車のタイヤ交換のように、上に持ち上げると容易くタイヤが外れることになる。すなわち、ジャッキだ。そこでは、八度まもるの精神性は、八度美幸からの影響に基づいてタイヤが外れたものと仮定できる。それだとpatient O.T.とは症状の起因が異なる。それは、私のキ・ボ・ウとは異なるのだ。だから、たぶん、他人の空似だろう。

 他人の空似だろう。
 他人の空似だろう。

 他人の空似と、頭の中で繰り返しながら店内に入った時、あやうくそら豆煮を買ってしまうところだった。危なかった。そこで、深呼吸をして一端息を整え、妻が求める黒いかりんとうを探しに店内をくまなく回った。

 お菓子コーナから少し外れた位置にかりんとうが特売として売られていた。ただ、何度探しても黒いのはなかった。よくよく見ると、今日に限って”みるく”色はあっても、その片方の”黒糖”色のかりんとうの方はすでに売り切れだった。
 しかたなく私は駐車場のAudiに戻り、エンジンをかけ、”黒糖”色のかりんとうの行方を夢想しながらペダルを踏んだ。

 ヴォォォオンンン!

 無双な夢想によりわずかのレスポンスで反応してしまったそのエンジン性能は、思ったよりも吹かしてしまい、駐車場に居る多くの人がびっくりしたようにこちらを振り向いた。やはりAudiで買い物に来ないほうよかったかもしれないと反省した。

 
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