No.2082

題名:飲み姿も美しい人
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2081の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 僕は比較的トニーよりもプログラミングが得意であった。一方、あまり具体的なシナリオは思いつけない欠点がある。ここに執筆してあるように国語能力も低い。それは自ら認めている。ただし、トニーにはもともとの文才もあったのだろう。
 彼はスタンフォード大学時代にあのアウトスタディング・ニューヨーク誌にて短編の最優秀賞をもらったぐらいの文才を持ち合わせていた。それも一度だけでなく2度受賞している。彼がそのまま執筆を続けていたとすれば、今頃は有名な作家にでもなれたはずだ。それぐらいにアウトスタディング・ニューヨーク誌の受賞は作家の登竜門への一つのステータスでもあった。歴代のアウトスタディング・ニューヨーク誌の最優秀賞者の多くは、今では大御所の作家として大きく名をはせている人も少なくはない。
 でも、彼はその道を選ばなかった。
 同じコンピューターサイエンス学科での僕との意気投合があってから、彼は小説ではなく、ゲームシナリオを書くようになった。僕があまりにも熱心にゲームシナリオの重要さを彼とともに話したことも理由の一つにあるのかもしれない。そういえば、彼と夜通し話したこともあったな…。
 その時から、トニーには小説だけではなく、ゲームのシナリオを生み出す方の才能が、僕にははっきりと見えていた。トニーと組めば、何かができる。そして、僕は、彼の意図するところをくみ、彼のシナリオに沿って多少荒削りでも彼の意図するゲームを互いに切磋琢磨しながら構築し、コーディングし、その半ばベータ版でもあったがそのゲームを同僚に配布することとなった。
 学科内でいっときそのゲームが話題となった。それをきっかけに僕たちは、そこに次世代の将来性があることを見越して、本格的に手を組むようになった。その後、ゲーム業界に向けてアメリカンドリームを、まさにアメリカの地で夢見て、僕たちは邁進することとなる。とても楽しい時期だった。
 ジェニファーと出会ったのも確かその頃なはずだ。あれはJazz Clubモアビーでのことだ。
 あの日、トニーと連れ立ってさっそうとジェニファーがそこに現れた。その時、ClubのバックにはGerry MulliganのNight Lightsが演奏されていたことを今でも鮮明に覚えている。それはまるでジェニファーとの出会いを予期したかのような夜の帳だった。確か、演奏していたのは見た目にも若手だったが、円熟した雰囲気を見事に奏でているその音楽に、その後の多少のアルコールも手伝って、僕たちはとてもいい気分になった。ひたすら将来のドリームについて心地いいぐらいに語り合い、ジェニファーもその話題に加わり、僕たちのあの時の姿は、新たな時代を起こそうと3者がともに眩うばかりの光を放っていた。
 ジェニファーは、ラフなTシャツに髪を後ろで束ね、スリムなジーンズを着こなし、ラフでもそこにはスキのない輝きが見て取れた。ファッションにいささか疎かった僕でも、その輝きが感じられたぐらいだった。まさにできる女子といった雰囲気を醸し出している。耳のピアスも揺れながら、その飲み姿にはとてつもなく美しさが漂っていた。彼女はトニーの遠縁でもあったが、僕は話をするたびに、ジェニファーに惹かれていることをその時、実感していた。実は、後で聞くところによると、ジェニファーも僕に対して同じ気持ちだったようだった。すなわち、僕たちは互いに惹かれ合っていたことになる。

 
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