No.2073

題名:妻との間のアクリル板
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2072の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 「電気けいれん療法…???」
 僕は医師に聞き返した。花見というめでたいような名を持ったその医師は、僕の疑問に率直に答えた。
「そうです。電気けいれん療法です。ここしばらく、投薬によって八度さんの様子を見ていました。しかし、投薬の効果はどうも八度さんには限られているようです。いくつかの薬の種類でカクテルしましたが、別の方法も必要だと判断しました。そこで提案したいのが、電気けいれん療法です」
「で、で、でも、それをするには妻とプラひもの許可も得ないと…」
「プラひももですか…。もちろんですとも。その前に八度まもるさんの自らの意志を予め確認したいと思いまして、今回電気けいれん療法を提案させていただいたわけです」
 花見医師はそう答えた。
 その後、花見医師はとても丁寧に電気けいれん療法について説明してくれた。まず全身麻酔下で行われ、筋弛緩薬という注射をしますとのことだった。そして、眠った状態でこめかみに電極を通して電流を流すので安心ですとのことだった。それによって、八度さん(僕)のような薬が効かず、重い鬱状態にある人に対して、90%以上の症例で効果が得られていますとのことだった。
 治療自体は30~40分ほど、その後麻酔から覚めた後に経過を見るために2時間ほど、それで終了となりますとのことだった。効果が出るまで3~4回の治療を実施しますが、麻酔下で行われるため苦痛などはなく、物忘れなどの副作用もみられることはありますが、数時間から数日で回復しますとのことだった。
 僕はそれを聞いて安心し、同意書にサインをした。でも、プラひもにも同意かどうかを相談しないといけない。
 「プラひもにも相談したいのですが…」
と花見医師に伝えた。花見医師はそれに対してこくりと頷いただけだった。その後に、それでは奥さんとも連絡を取って電気けいれん療法の件について相談しておきますと僕に告げた。僕は分かりましたと答えた。
 その後、ベッドでぼっーとしていると、看護師さんが僕の部屋を見に来た。そして夕方に妻が来ること、その時に花見医師も同席して電気けいれん療法について説明すること、などなどを教えてくれた。

 夕方になり、妻と面会室で対面した。花見医師と先ほどの看護師さんもそこに同席していた。
 妻との間にはアクリル板があり、何だか妻がそばに居るのに隔てられた遠くに行ってしまった気がした。
 花見医師は、僕に朝方にした電気けいれん療法の話を妻にした。僕にした話とたぶん同じような内容だったように思うが、最近、冨に記憶が薄らいでいる感じがしていた。そうだ、相棒のプラひもにもこのことを話さないと…。
 僕は会話を遮り、妻に向かって、
「相棒のプラひもにもこのことを伝えてほしい。そして、僕が電気けいれん療法を受けることを説明してほしい」と言った。その後、妻の目から涙がこぼれ始めたのが見えた。花見医師はそれを見て、僕の妻に、後で八度まもるさんの入院の状況をお伝えしますと告げていた。

 
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