No.2062

題名:オオワク・バク・ゼン
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2061の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 真空管街へ向かえば、Snapdragonまでの進路とかなり左にそれることになる。そのため、その後にSnapdragonまで向かうとすれば、時間は実質2時間30分以上かかりそうだった。ただし、電流スピナーの充電が0になれば、もはや前後左右への進行どころか浮上すらできなくなる。やっぱり、こちらを先決しなければなるまい。
 ただ、スマホ外部での時間経過のことを考えると、僕に残された時間はあまりない。近いうちにりどるは機種変するかもしれない、それ以上にエヴァンジェリンと僕との心の絆も閉ざされてしまう。もしかしてもはや、僕の体(テイ)であるりどるに、エヴァンジェリンは恋われ乱され溺愛されている、かもしれない。そう思ったら一刻も早くスマホ外部へと僕の魂を移しかえたかった。
 (エヴァンジェリンがりどるに心奪われてしまう前に…)
 (にゃおーん)
 (今鳴いたのはだれだ)
 (にゃおーん)
 (おっと、口からつい鳴き声が出てしまった。なんだ、僕か…僕?)
 コントロールレバーを真空管街のある北へと向けた。ディスプレイによれば、その方向には真空管街があり、給電所もあるはず。そう考えながら、ふとレバーを握る手に違和感を感じた。見ると、なぜか手の内側に肉球がつきはじめている。全身も毛も多くなっている。僕はもしかしてネコに変身しているのでは…。
 にゃおーん、また、鳴いてしまった。
 どうやらあまり時間がないとようだにゃん…。
 にゃん…?(にゃんてことだ…)
 (りどるの代わりに僕がネコ化しているにゃん)
 僕の肉球はコントロールレバーに吸い付くがごとく、ぷにぷにしていた。何とかして意識だけはネコ化ならないように、僕はエヴァンジェリンのことを考えることにした。彼女と機内で出逢った時から、バーでの会話までつぶさに思い出し、ネコ化する意識を払しょくした。
 幸いにしてその後はネコ化に歯止めをかけることができたようだった。肉球のぷにぷにも初期の段階でとどまっている。毛の量もさほど変わらない。ネコ化する意識で心理を払しょくする方法が奏効し、心がネコ化に対して装甲した感じだった。そして、電流スピナーで走行している中、ここでの原稿は草稿だったことに気づいた。言うなれば、草稿が”ひ”を”き”に変えて騎兵して物語の根幹をなすボトムズ、すなわちコンセプトがまるで定まっていないかのようだった。だから、スマホ外部の動向を探ろうとも、エヴァンジェリンとりどる(テイは僕だが)がどうなっているのか”ダ”を”ク”に変えてオオワク・バク・ゼンとしかここでは更新(交信)できなかった(図)。

図 バク・ゼン1)

1) https://www.pinterest.jp/pin/44543483805368685/ (閲覧2021.6.21)

 
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