No.2056

題名:焰
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2055の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットは完璧だった。そして僕は、A Love Supremeのパート1:承認(Acknowledgement)から、パート2:決意(Resolution)に向けて、ジミー・ギャリソンのソロベースの後、不可解なジョン・コルトレーンの音階でもって、僕はエナイさんに伝えることを決意(Resolution)した。エナイさんと程度は違っても、僕自身も傷ついていたからだ。
 僕:「エナイさんは確かに両方の視力を病気により失ったかもしれない。その視力はりどるによって再び光が与えられた。でも、僕も、祖父ヤナチェクと同様にほとんど片目は見えていないんだ。それは、遺伝的な要素に寄るところが大きいとは思う。そして、祖母の死、そして子ネコのリトルの殺害は、僕にとって目を覆いたくなるような、もう何も見たくない事実だったんだ。だから、例え、嫌なこと、つまらないこと、あるいは腹立たしいことに対していかなる対価があろうとも、それを行うことは僕にとって大いなる退化なんだ。それは言い換えれば、心の大火でもあったんだ。どうにも耐火できなく、僕はそれに対して大過なくとも、完全に心が消失された。初めて僕自身が灰になったことも感じた。当時、僕の心の中には灰以外は、何も残ってはいない。くすぶってもいない。その時の僕の人生には、もう何も焰が見いだせなかった。今のエヴァンジェリンとの出逢いは、僕に何か大事なことを思い出させてくれる」。僕はここで唾を飲みこみながら、「エヴァンジェリンの存在は、僕の心に焰(図)をもう一度取り返してくれた。You toのように、The Unforgettable Fireしたんだ」と告げた。

図 焰1)

そして「だから、僕の体に僕の意識をもどしてほしい」と強く訴えた。
 「あれは、りどるではなく、僕の体なんだ」
 「エヴァンジェリンとの永遠の魂の絆を繋ぐ、僕の焰の宿主なんだ」
 その時、エルビン・ジョーンズによるこれでもかというドラミングのパート3:追求(Pursuance)の後、すべてを淡々と仕切るマッコイ・タイナーのピアノのパート4:賛美(Psalm)へと、A Love Supremeは移り変わっていた。エナイさんはそのカバラに合わせるかのように、次第に顔面の様相も落ち着きを見せ、いつものように花と鼻をくんくんとさせるようになっていた。
 「分かったわ。ミチオ様の意識そして体を、りどる様から取り戻す方法を教えてあげます」
 そうして、エナイさんはカチカチと音のなる方向を指さした。
 「あそこにはCPU中央国家集権であるSnapdragonが居ることはご存知ですね」
 「もちろん」
 「Snapdragonはいつも腕にクロックを巻いています。そのクロックをSnapdragonから奪い、オーバークロックしてください。すると、一瞬ですがSnapdragonは沈黙します」、「その時に呪文を唱えるのです」

1) https://www.pinterest.jp/pin/365847169728530295/ (閲覧2021.6.12)

 
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