No.2054

題名:大いなる代償
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2053の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 (僕はスマホに閉じ込められている)
 りどるは陽気そうにエヴァンジェリンと話をしている。その話をしている僕の立ち位置には、表向きのそこにいる人間の姿・形は、僕そのものだった。でも、もはや中身はりどるだ。
「えヴぁんちゃん。いい旅になるといいにゃん」
「そうね。ミチオのおかげ。ありがとう」
 エヴァンジェリンは僕にキスした。
(違う、僕はここに居る)
 エヴァンジェリンに僕がここに居ることを告げようとするも、りどるはそれを察してかあるいは無視するかのようにスマホの電源ボタンを押し、画面をスリープモードへと変換させた。それから、あたり一面の光が消え、音も、わずかの音を除いて一切聞こえなくなった。

 ただ、遠くでカチカチと音がする。
 あれはSnapdragonの音だ。
 以前、スマホの中に居た時に聞いた音だ。
 僕は、すでにスマホに取り込まれた過去の出来事を少しづつ鮮やかに思い出していた。

 「若さと引き換えに、ミチオ様の魂を頂きました」
 振り向くとそこには、あの、秘密倶楽部・にゃんこたろう?のオーナーであるメガミ・エナイさんが居た。
 「ミチオ様の魂は、りどる様の魂と、交換されました」、「そのきっかけとして、ミチオ様は若さを手に入れました、手に入れたはずです」、「若さを手に入れ、わたくしたちは、ミチオ様の夢を実現させました」、「祖母トミヨを失い、さらに子ネコのリトルを失い、ガス室で閉じこもるミチオ様の生活に、わたしくたちは、あなたに新たなる力を宿したのです」
 メガミ・エナイさんは、花と鼻がくんくんとさせていた。目が花で覆われていても、そこには伝えるべく意思としての眼光が感じられた(図)。エナイさんは、僕に、重要なことを伝えようとしている。

図 目が花で覆われて1)

 「わたくしたちは、あなたの祖父であるヤナチャクの魂を呼び寄せました」、「祖父ヤナチャクは、あなたに魂を譲ると申されました」、「そこで、わたくしは呪術を施し、あなたに祖父ヤナチャクの魂を授けることにしました」、「あなたはその時、祖父ヤナチャクの当時の年齢に戻ることができたのです」、「それはすなわち、あなたを若返えらせたことを意味しています」、「ただし、それには大いなる代償が伴います」

1) https://www.pinterest.jp/pin/737745982708809487/ (閲覧2021.6.11)

 
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