No.2047

題名:ずっと彼女を抱きしめていた
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2046の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 INCEPTIONの如く、見たけど理解できなかったその夢の発端(INCEPTION)について、エヴァンジェリンにこと細かに話した。
 「ジャッカン、クリストファーはむずい、インターステラ―は分かりやすくフェバリットだったのに」。「{今のお前には、これすら分からんの…}というようなINCEPTION的な難題をここに来てクリストファーから突きつけられた気がする」。「でも、飛行機で寝て居た時に、僕の夢には”りどる”と名乗る子ネコが現れた」。「僕は彼のことを”なぞかけ(仮)”と名付けてたんだけれども、彼曰く”ぼくは、りどる”といっていた」。「だから、彼の名はきっと”りどる”だ」。「それは、偶然にもエヴァンジェリンが飼っている子ネコと同じ名前なんだ」。「その彼に対して僕はこんなことを言った覚えがある」。「僕は、彼女のファンだ、と」。「で、そのことを、今思えば、エヴァンジェリンだった」。「やっぱりエヴァンジェリン、だった、ん、だ」。「そうだ」。「僕にとってとても大好きなエヴァンジェリン」。「エヴァンジェリンのこと、大大好きなんだ…」。
 トム・コリンズ氏あるいはジン・トニック氏が仕掛けたかもしれない僕のその魂の叫び声に、エヴァンジェリンは、僕に抱きつくきっかけを与えてくれた。そして耳元で”りどる”が鳴いているかのように、彼女は抱きしめながら、にゃおーんと僕に耳打ちしてくれた。その耳打ちはやっぱり”りどる”だった。
 僕は、腰が砕けた。そして、じっと彼女を見つめた。見つめずにはいられなかった。まるで、Every Breath You Takeされ、僕は、彼女がThe Policeならその眼光に逮捕され、息ができないくらいの子羊のような千鳥足を僕はしていたと思う。まるで酩酊しているかのように。
 本当のEvery Breath You Takeの歌詞に含まれた含意はそうではないかもしれない。この曲は、Stingが最初の妻との離婚訴訟の前後に作った曲らしい1)、からだ。それでも、僕の呼吸は、彼女の呼吸とシンクロニシティーし、キスに酔て、精神的にもEvery Breath You Takeされていた。
 キス? あれ、そういう展開…。
 僕は、エヴァンジェリンと当前のようにキスをし、されていた。でも、それは、愛情の表現というよりも、出逢ったことに対する印のようなものだった、のかもしれない。少なくとも今の僕には。
(にゃお-ん)、(にゃお-ん)、(にゃお-ん)
 僕も彼女にシンクロニシティーして鳴いた。それは”りどる”のように泣いた。そう感じた。エヴァンジェリンと出逢えたこの奇跡の喜びに。
 彼女も酔っていたのだろうか。でも、その時の抱擁は、これから起こる僕たちの人生に対して、何もかもが肯定的に支援するかのような、”しあわせ”そのものを体現していた。これが愛なんだと僕は思えた。
 やがて搭乗する時間だろうか。それまで僕は、ずっと彼女を抱きしめていた(図)。

図1)

1) http://oyogetaiyakukun.blogspot.com/2013/01/every-breath-you-take-sting.html (閲覧2021.5.29)
2) https://www.pinterest.jp/pin/737745982710972156/ (閲覧2021.5.29)

 
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