No.2014

題名:ザクロが割られる夢を見た
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2013の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 何日か勤めると、その仕事がいかに自分に向いているのかが分かり始めた。僕は意外とネコが好きなんだろう。そう思えた。特に、何かを連想させたボス格のネコがその集団を仕切っているも、ネコの階級社会を垣間見られることなんてめったにない。そもそも個人プレーの多いと言われているネコに階級社会があることに、ここで初めて気づいた。アパートでのリトルとの同棲生活では、得られなかった観察であった。
 給料も悪くはなかった。月々5万ほどであったが、仕事の内容からすれば、あまりにもいい給料かもしれない。求人情報には額は提示されていなかったが、その他の職種から今考えると、破格の額であることには間違いない。幸いなことに、面接での係員の人(実質は、その人が社長兼係員であったことが後日判明するが…)とも良好な関係を築けていた。
 そのネコの一団はどうやらオスの方が多いようであった。そのため、メスが居れば、ぜひ仲間に加えてほしいと社長兼係員であるゲツベ・ヨゼオさんに強く言われていた。勤務の度にことごとく、「そういえば君の飼っているネコはたしかメスだよね」とか、「そのネコの名前は何というの」とか質問を何度もよくしてきた。ただ、リトルはまだ子ネコなので、そのことを盾にして体よく彼の質問に対してあやふやに返答していたが、そのうちに「そのネコ、ここに連れてきてほしいなぁ。ねっ、お願い」から、次第に威圧的に「そのネコ、ここに連れてきてよ」と何度も迫るようになってきた。僕も給料をもらっている以上は、彼には逆らえない。そこで、「明日、連れてきます」としぶしぶ答えた。
 ゲツベさんはにやりと笑い、「よしよし」とうなずいていた。何だか、嫌な予感がしないでもなかった。
 リトルはまだ小さい子ネコだから、僕は不安でならなかった。特にボス格のネコであり、ゲツベさんがそのネコを呼ぶ際にはたぶん名前だと思うが、「Hi(ハィ)、トラー」と掛け声をする。その縞模様が、虎に似ているからなのだろうか…? とにかく僕は、そのボス格のネコに脅威を感じていた。とても神経質なネコで、ともすれば食事の際に僕の手を引っ掻くことが多く、僕にはまったくなつかなかった。その一団にリトルが入れば、そのネコにリトルが虐められる、そんな気がしていた。
 仕事が終わり、アパートに帰ってから、リトルに明日一緒に仕事に行くことを伝えた。僕の気持ちが分かっているのかどうなのかは判断がつかなかったが、いつもと同じように「にゃおーん」と僕にすり寄ってきた。その仕草が可愛らしかった。

 その夜、ザクロが割られる夢を見た(図)。何かの暗示なのだろうか?
 それが何を意味するのか、まだ分からなかった。
 でも、すでに分かっていることは、それはNikolay Biryukov氏の手による画像であること、だった。なぜなら、1)にそう書いてあったからだ。

© Nikolay Biryukov

1) https://www.pinterest.jp/pin/225602262557877639/ (閲覧2021.3.30)

 
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