No.2006

題名:愛Cloudでシェアされ
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.2005の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 りどるとコンデンサー街を歩いていると、ピカピカとそこらかしこにLEDが輝き、怪しい看板も多く立ち並んでいる店が見えた。その看板は、「にゃんにゃん・ぺろぺろして」とか、「にゃんころころカフェ・あはは~ん」とか、「あなたがイクなら・わたしはComing」とか、はてさてなんの店なのだろうか。そして、時には、意識高い系の看板もあった。「あと明日の件・マストでないけど・リマインドした方が・モアベター」とか妙な看板もあった。なんなんだ、この奇妙な空間は。
 店によっては、店の前に呼子もいた。「いらっしゃい、いらっしゃい、なんにしやしょうか。どうか寄ってくださいよ、そして酔ってくださいよ」といいながら、僕に言いより、テッシュを配る。テッシュには60分3000円ぽっきり、というチラシも丁寧に封入されていた。ただし、だ。街に居るどの人たちも、不思議と僕と歩いているりどるを見つけると、途端に態度を変え、「はっ、りどる様」とみんな一様に啓礼した。りどるの方は、赤いぺろぺろ飴ちゃんをなめながら、「にゃんにゃん、そんなにきーつかわんで、ええにゃん」と、のほほんとしていたが、この世界におけるりどるは、もしかしてかなりの地位なのだろうか?と思えた。
 しばらくすると、りどるは狭い路地に入っていった。僕もついていくとその奥にさらに怪しげな看板が見えた。「秘密倶楽部・にゃんこたろう?」という看板だった。りどるはその店の前まで行き、戸に備えつけられているブザーを押して、インタホン越しに「りどるだにゃん」と伝えた。戸の奥から「お待ちしておりました」と川の上流で水が流れるがごとく透き通る清らかな声が聞こえた。
 戸が開くと、そこには目が花で覆われた美しいであろう人が立っていた(図)。

図 目が花で覆われた1)

 「りどる様。お待ち申しておりました。こちらへどうぞ」
 再び透き通る清らかな声が彼女から発せられた。
 倶楽部内に入ると、目の前に大きなディスプレイがあり、彼女はその前の椅子に座った。座るときに、椅子の上を、花をそして鼻をくんくんと鳴らして座った。変わった行動だった。
 「かのじょのなまえは、めがみ・えない、だにゃん。せいはめがみ、なはえないだにゃん」
 僕はいつもの癖で忘れないように彼女の名前をスマホ内部のスマホにメモした。相変わらずの漢字ご変換様だったが、そのメモは、愛Cloudでシェアされ、りどるはディスプレイを介してそれを見ていた。
{女神榎井…}「おっと。違った…」
「そう、だにゃん。えないのじは、ぐうぜんあってるにゃん。めがみのじは、ちがうけど…。めがみは、こうにゃん」
 ディスプレイには”目上”とあらわれた。

1) https://www.pinterest.jp/pin/768708230141209632/ (閲覧2021.3.25)

 
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