No.1970

題名:まだ少し眠そう
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的に No.1969の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 一筋の光明が見える方向に、僕はひたひたと暗闇の中を歩んだ。すると、そこに小さなミカン箱が見えた。箱の側面には、ありあけと書かれてある。
 ありあけみかん。
 僕の大好きなみかんだった。
 そして、その箱の中を覗くと、なぞかけ(RIDDLE)…いやLITTLEな子ネコがそこに居た。
 彼女は、みゃー、みゃーと鳴きつつ、もうすでに失われている箱の中の缶詰を、必死になめていた様子が伺われた。彼女は、体も随分とやせ細り、明らかに川の淵、By This Riverで、”誰かによって捨てられた子ネコ”であることがわかった。僕は、彼女、オス・メスわからず、便宜的にその子ネコを彼女としたが、拾い上げた途端、僕の指に激痛が走った。
 彼女に噛まれた。
 その時、彼女はにゃおーんと木霊しつつ、ひたすらそのまま僕の指を噛み続けた。
 でも、僕はじっとしてそれに耐えた。すると、次第に彼女からの力が抜けると同時に、安心したかのように彼女は僕の手の中で寝ることを始めた。その時、寝る前に彼女は声を発した。耳をすませば、それは先ほどジブリ的に聴いた声、それとそっくり同じ種類の声質であった。
 「にゃおーん」
 (この状態で箱の中に戻すことはできない…)
 僕の中の良心がとがめた。このLITTLEな子ネコを見捨ててはいけない。
 そこで、僕は手の中で眠るその子ネコを抱え、この先どうして育てればよいのだろうか、と思案しつつ、アパートに帰った。

 アパートに戻ると、さっきまで真昼間だと思えた時間が相当に経っていたことが分かった。
 暗いはずだ。真っ暗なはずだ。それは心理的なものだけではなく、本当の時間もそうだった。
「もう、19時か…」

 布団の中でその子ネコを包みながら、僕も次第に眠りに落ちた。昨晩、あまり眠れなかったせいもあるのかもしれない。あるいは、その子ネコが僕を眠りに誘ったからなのだろうか。

 ふと目が覚めると、僕の傍に、まだ少し眠そうな彼女がそこに座って居た(図)。

図 まだ少し眠そう1)

1) https://www.pinterest.jp/pin/737745982707764173/ (閲覧2021.2.26)

 
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