No.1931

題名:おうまさんや境になー
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1930の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

「お客さん、今日はええ大トロ手に入りましたですぜ、ええときに注文してくださった」
「おお、そうなんか、大将。なんかうれしいいやん」
「じゃ、にぎりまっせ」
 そうして大将がとりだした大トロは、その対象がピンク色に輝き、油が乗っていることがわかった。まるで、油の海で泳いでいるクジラのような輝きを帯びていた。僕の花からはその様子にプシュ―っと噴水が挙がり、花を愛でるように、鼻をかんだ。相当に、堪っていた。
 久しぶりの大トロ、しかもここの大将なら、その価格も知れている。せいぜいで一貫200円での提供だろう。それにしても、200円の割には何とも言えない輝きを鼻っている大トロだった。そうして、大将は、はにかんで、は二貫で、を下駄に置いた。下駄に置かれたその対象は、大トロは、なんだかげたげたと若干笑いをもようしているような感じでもあった。
「お客さん、ええ代物や境に、今日ばかしは境目のない価格でもええやろか」
「境目というと…」
「お客さん、これ実はおうまさんなんやで、久しぶりに握って手が震えましたぜ」
「ほーーー、そうなんや、大間産か」
 一貫を手に取り、その一貫を手から口へと一環して運びつつ、僕は大トロをほおばった。
「実に、うまい」
「そうでっしゃろ、お客さん、何と言ってもそれ、おうまさんや境になー」
 でも、味わった後、なぜだか大トロ、それもマグロとは異なっているように思えた。単なる自分の経験不足からくる味覚なのだろうか。なんせ、本音で言えば、大間産を食べたのは初めてだったから。
 もう一貫を口にほおばった。
「うまい、やっぱうまい」
「そうでっしゃろ、なんせこれおうまさんや境になー」
 大将は誇らしげな顔をしていた。
「でも、大将。これを競り落とすの大変だったでしょ。大間産なら…」
「いや、そうでもないで、お客さん。いつもの取引先の精肉工場から仕入れただけやで」
「精肉工場…というと」
「そうなんや、それおうまさんや境になー」
「おおまさん…?」
「ちぃっちっ。お客さん、発音がちょっと違いますで。それ、お・う・ま・さん。そうなんや、それお馬さんや境になー」
「お馬さん…」
「ところでお客さん。随分とストーリーが脱線しとるようやけんど、それでオッケーなん?」
「まあね。がたん ごとん がたん ごとん、のせてくださーい、ちゅう感じ…」、「おうまさんや境になー」

 
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