No.1920

題名:缶だ。
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1919の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 「ねぇ、タケヒサさん、わたしのこと覚えてるかな?」
 「もちろん。今でも覚えている。クミちゃんのことは、一生忘れられないよ」
 「よかった。うれしいな。タケヒサさん」
 「でも、クミちゃんは、どうして僕の前から忽然と消えたの?」
 「消えてないよ」
 「僕の前から?」
 「覚えてるよね…、1年経っても。今でもわたしのこと好き?」
 再びコーラスする記憶の奥底のその声に、僕は少しばかりぼーっとしていた。シズコが「ダリオくん、まだ酔ってる?」と聞いた。「いや、そうじゃないけど」と答えた。「ふ~ん、あっ、分かった。ワカモト・クミのこと思い出してたんでしょ…」、「そうじゃない、決してそうじゃない」、「本当に…」、「本当に、本当…」、「ふ~ん、そうなの…」。その会話に僕は若干に、瞼が引きつっていた。きっとシズコには、僕がクミちゃんを思い出していたのが、ばれてる。あれから一年経っても、シズコもクミちゃんと僕の間にあったことをしっかりと記憶に刻んでいるようだった。
 ガタガタガタと窓が揺れ、外は天気も悪くなり始めていた。この部屋にも、何だかそれに応じて不穏が立ち込めている。何とかしなくては。そうだ、コンビニに行って缶のハイネケンを買えば、ハイネケンをシズコに差し出せば、少しは機嫌を直すかもしれない。
「コンビニに行って、ハイネケンを買ってくるよ…。シズコのために」、「別にいいよ、今晩はエイヒレだけで…。ふん」。そうして、妻の背中は何か訴えるようで、TVのYoutubeを見入ってた。
 古いアニメの美味しんぼだった。
 テロップによれば、それは、美味しんぼ 公式チャンネル【デジタルリマスター版】チャンネル登録者数 12.3万人、「板前の条件」20話後編 | 美味しんぼ | [ENG sub] 。489 natsumeさんのコメントにもあるように、僕の記憶が正しければ、この話は「なんだかんだ言いながら、息子が自分好みに成長したことを喜ぶクソ親父雄山」1)のガチ神回だったはず。ツンデレも、この回でよくわかる。
 何かが分かった。
 きっとシズコも、ツンデレだ。
 同じく?タクティン!さんのコメント「雄山先生 料理食べながら 独り言が多いな笑笑」1)も気になった。何だ神田言いながら、缶だ。缶のハイネケン。そして、孤独のグルメ Season8 第9話に登場 三燈舎:サントーシャミールス :千代田区神田。感。僕のカンだ。当たっているはず。
 僕はYoutubeをじっと見入っているシズコをはた目に、しずしずとコンビニに行き、缶のハイネケンを買った。その後、美味しんぼを見続けているシズコにそれをすっと差し出した。シズコと目が合った。
 彼女は、にっこりと微笑んだ。

1) https://www.youtube.com/watch?v=-9KV08SqjF8&t=730s (閲覧2020.12.18)

 
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