No.1907

題名:とても険しい目
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1906の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 (間違いなく、僕の分身だ)。
 僕たちは、同じような夢を見ていた。(でも、本当は、彼は、分身じゃない、僕自身なんだ)とクミちゃんに告げようかと思った。それでも、結局、僕は、クミちゃんの話に対して、「分身か…、なかなか面白い夢だね」、としか答えられなかった。
 …、部屋の奥で光っているあの二つの目がきらりと光っている。口をうっかり滑らそうものなら、そのつるはしで頭をぶち抜くぞという態度を、彼”くっくどぅーどるどぅ”は示していた。「くみしゃんにはいうな。ほんちょうのこと、いっちゃだめだ」と、その態度から口止めされていた。
 僕の場合、彼は夢じゃなかった。彼は、夢から覚めてもそこに居た。彼は、僕たち二人をずっと観察していた。夢の中の彼とは違い、現実に、僕の眼に見えている彼は、とても険しい目をしていた。

ぼきゅは、くみしゃんを、ころしゅんだ。

殺す…、なぜ。

ぼきゅは、くみしゃんを、ころしゅんだ。

 彼の険しい目は、そう告げていた。なぜ、クミちゃんを殺さなければならないんだ。僕は…。くっくどぅーどるどぅ、どうしてそんなことするんだ。

ぼきゅは、くみしゃんを、ころしゅんだ。

 その一点張りで、彼は変わらなかった。

僕が、クミちゃんを、殺す…?

しょうだ。

 彼のまなざしがこちらを向きつつ、僕は眠気に耐え切れず、少しづつ瞼を閉じ始めていた。考えれば、考えるほど、その理由が分からなかった。なぜ僕はクミちゃんを殺す必要があるのか。どうしてなんだ…。
「ねぇ、タケヒサさん、わたしのこと、本気なんだよね…」
 バスの中での会話が再び思い出された。僕には何も障壁はないはずだ。僕たちの間には何も障壁はないはずだ。僕は、本気だった。「うん、もちろん」、僕はクミちゃんをぎゅっと抱きしめながら、そうささやいていた。クミちゃんは、しあわせそうに眠っていた。

 
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