題名:白銀の湯
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1904の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
肌を確かめると、クミちゃんがそこに居るのが実感できた。僕とクミちゃんの肌が溶け合うように、僕はクミちゃんのあらゆるところをまさぐった。
ずっと離れたくない。クミちゃんのことが大好きだ。とっても大好きなんだ。
時折、もらす吐息は、特別なにほひは、僕にその想いを強くさせた。
再び、僕は顔を上げて、クミちゃんを見つめ直し、その唇に唇で触れた。薄暗い明かりの中で、クミちゃんはにこりと笑い、「タケヒサさん、大好き…」と抱き着いてくれた。それに呼応するかのように、僕もぎゅっとクミちゃんを抱きしめた。
このまま離れたくない。
そう思った。
「僕は、今、とってもしあわせだ…」
「わたしもよ…タケヒサさん…」
そのまま僕たちはしばらく抱き合っていた。窓の外には月明かりが見えた。とても大きな月だった。
ぴったりと密着していた僕たちの肌は、まるで一つのつながりのように思えた。そこに何も隔たりはない。僕は、命を救ってくれたクミちゃんを、改めて精いっぱい抱きしめた。
抱きしめ合いながら、お互いの体を何度も何度も確かめ合っていた。
しばらくするとクミちゃんは「タケヒサさんが、欲しい…」と言った。そうだ。実は僕も、クミちゃんのことが欲しくて欲しくてたまらない。
その時、部屋の奥で二つの小さな明かりが灯っていたのが見えた。よく見てみると、それはヒヨコの二つの目からの明かりだった。僕の眼が正しければ、眼の奥の僕の認識が正しければ、そのヒヨコはあの”くっくどぅーどるどぅ”に間違いなかった。薄明りで名札がよく見えなかったが、彼はくっくどぅーどるどぅだ。そして彼の右手にはつるはしが握られていた。
「ぼきゅは、いまからおんしぇんを、ほるんだ」
「温泉、伊香保で?」
「しょう、おんしゃんをほって、はくぎんのゆをしゃがしあてるんだ」
「白銀の湯を?」
「しょう」
彼が、床をかちんかちんと掘る音が耳元で鳴り響いた。ふとクミちゃんを見ると、そんな音は聞こえていないようだった。ヒヨコの存在も見えていないようだった。でも、そこには限りなく、クミちゃんの吐息が舞っていた。その舞に、待っていたかように、僕は、クミちゃんと結ばれたいという欲望に素直に身をゆだねた。
クミちゃんと結ばれると、僕は、その暖かく包んでくれるクミちゃんに翻弄された。それに合わせるように、くっくどぅーどるどぅも、けんめいに、つるはしを、掘っては持ち上げ、掘っては持ち上げを繰り返した。
そして、かちんと最後の音が鳴り響くと、びゅすいーとつるはしの先から温泉が沸きだしているのが見えた。
それと同時に、僕もクミちゃんの中で果てた。