No.1904

題名:特別なにほひ
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1903の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 クミちゃんに「温泉はどうだった?」と問われ、「黄金の湯だったよ」と答えた。今度は「クミちゃんの方はどうだった?」と僕は問うた。「素敵だった。タケヒサさんとここに来られてよかった」とクミちゃんは答えた。その時、湯上り後のほのかな温泉の香りがした。
 窓の外には街灯に照らされた石段が見えた。窓に面した椅子に僕たちは二人並んで腰かけながら、二人でそれをしばらく眺めていた。そして、クミちゃんは振り向きざまにこう言った。
「わたしのことずっと忘れないでね」
「忘れるって? 今、とってもしあわせだけど…」
「そうだよね…、えへへっ」
 クミちゃんはにこやかな笑顔をした。そして、そのまま、ごく自然に、そっと僕の肩に頭を寄りかけた。すかさず僕は、クミちゃんの顎に手をかける。クミちゃんはこっちを向く。僕たちは再び接吻した。クミちゃんの髪からは、温泉の香りとシャンプーの香りが混ざり合ったにほひがした。
 クミちゃんの浴衣の胸元が少しはだけていた。手を伸ばすか、伸ばさないかと僕は若干躊躇している時、クミちゃんは僕の手を握って、胸元に僕の手を当てた。
「ほらっ、どきどきしてる」
「ほんとだ…」
 その大胆な行為に、僕はとてつもなく大欲情した。大欲情が大浴場なら、僕の大浴場はあふれんばかりに、こんこんと温泉が沸きだしそうだった。
 そのまま手を繋いで、僕たち二人は布団に横になった。
 布団の中で、お互い見つめ合いながら、もう一回接吻した。クミちゃんの頬に触れながら、クミちゃんも僕の頬に触れ、見つめ合い続けた。
 僕は、少しずつ手を下におろした。頬から首筋、そして鎖骨へと手を動かした。しばらくしてクミちゃんの浴衣の上もさらにはだけ、息遣いも荒くなってきた。
 透き通るような肌だった。その肌からは伊香保の温泉のにほひもした。同時に、クミちゃんの肌の奥からも温泉とは違うにほひがした。ほのかに汗のような、それでいてこれがクミちゃんの本来の香りだろうか。香水とは違う、特別なにほひ。それは、ずっと昔、ずいぶんと昔に、僕がどこかで覚えているにほひだった。
「明かり少し消そうか?」
「うん、お願い…」

Let’s dim the lights, I wanna make love to you
Only thing I wanna do
I wanna make you feel good, feel good

 僕は薄明りの中でもクミちゃんのすべてを一つずつ一つずつ確かめるように、丁寧にその肌に触れていった。

 
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