No.1902

題名:想いがJoeと溢れて
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1901の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 その後、クミちゃんは「じゃあ、温泉に入ってくるね」と告げた。僕は静かに頷いた。タオルと浴衣を携えてクミちゃんは大浴場へと向かった。
 人と比べてはいけない。自分なりの道をただひたすらに歩めばいいんだ。洗面所の鏡に向かって、僕は自分自身で呼吸を整えた。それでも、仕事で疲れている僕の顔の中に、ここでの文章は間違いなくしあわせな自分を見つけることができた。こんな思いは久しぶりだった。
 僕は、このあとの、クミちゃんと過ごせる時間に意識を集中すればいい。
 人生は、仕事だけではない。やっぱりお互いが必要とされる愛がなければ、少なくとも僕という存在はもろくも風に吹き飛ばされそうな存在なんだ。
 でも、今は、間違いなく、留まっている。僕は、この世界に留まっているんだ、そう実感していた。
 鏡の向こうにReflexion。されている僕は、この上もなく充実していた。それは、限りなくクミちゃんのおかげだった。

 しばらくして、石鹸のにほひが香る浴衣を着たクミちゃんが戻ってきた。
「とっても、いい温泉だったよ。タケヒサさんも入ってきたらどう?」、「じゃあ、行ってくるかな」、「行ってらっしゃい…」
 そこらに石鹸のにほひが香り、後ろ髪引かれながら、僕も浴衣とタオルを持って大浴場に向かった。
 黄金色をした湯につかりながら、僕は再びしあわせをかみしめていた。それは何度も何度もかみしめても味がするするめのような味覚でもあった。泉質の効果もあるのだろうか。僕は、あの時、クミちゃんを思い切って食事に誘ってみた時のことを思い出していた。
 僕は、あの時、もしかしたら死んでいたかもしれない。
「ありがとう、クミちゃん」
 声に出して、そうつぶやいた。温泉から流れる湯の音がなければ、間違いなく独り言をいう変な人だと思われるところだろうか。そう思いつつも、僕は温泉につかりながら、I Believe In Youを歌い、クミちゃんへの想いがJoeと溢れていた。

I never believed in magic or that wishes could come true
But your very first kiss changed all this
Something only you could do
You made me a believer
You made me trust again
You showed me there’s a pot of gold at every rainbow’s end

1) https://genius.com/Joe-i-believe-in-you-lyrics (閲覧2020.11.27)

 
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