No.1869

題名:ニワトリの軍隊
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1868の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 くっくどぅーどるどぅ。くっくどぅーどるどぅ。その後も、僕の頭の中のニワトリが何度も泣いていた。なぜに、こけこっこーと鳴かないのか分からなかった。でも、泣いていた。何かを求めるようにして泣いていた。その何かは、今は分からなかった。
「最近、疲れていたみたいだから、ゆっくり休んでね」
 いつもは働けっ、もっと稼いでよねっという妻の、その思いがけないセリフに、僕は苦笑いした。苦笑いすると、頬がたぷっているのが分かった。鏡はここにはない。でも、鏡を見ると、僕の顔面はかなり腫れているのが薄ら目にも分かるだろう。そんなたぷり方だった。それだけではない。何だか顔が重いだけでなく、頭の中も重かった。ヘビー級のパンチをもらったせいもあるからだろうか。そういえば、自転車の彼はすこしガタイがよかったかもしれない。ヘビー級の頭の中、ぼんやりと彼のことを思い出そうとしていた。ガタイ、ガタイ、固いエイヒレ。
「なふぁなふぁ、あのえいふぃれ、かめなふぁったんだ。かあたふてかあたふて」
「あと1週間は入院して治療すればよくなると、お医者様がおっしゃっていたわ。でも、あなたを殴った犯人を見つけなきゃ」
「おいさぁさふぁ、おっしゃっていふぁ…(つまにしてふぁ、めずらひいいいかただな)。うぅん、ひょうだね…。ふぃらみすも、おいひかったよ」
「うん、もういいよ」
 涙ぐんでいる妻を見ると、もうこれ以上何かを伝えるのはよそうと思った。僕はだまったまま、かすかな視線の窓であったその腫れあがった瞼を閉じた。点滴に入っている何かの薬剤の影響なのだろうか。しばらくすると猛烈な眠気に襲われ、僕はそのまま再び眠りについた。

 夢の中ではニワトリが行進していた。一羽、二羽、三羽、四羽….、はて今は何羽目だろうか。
 どんどんと行進するその様子は、まるでニワトリの軍隊だった。どのニワトリも目をギラギラとギラつかさせ、大股で行進していた。掛け声も、コッケ、コ、コッケ、コと揃っている。ただ、最後の一羽のみがあたりをきょろきょろ見渡し、モウ、ケッコ、モウ、ケッコ、と変な鳴き方をしていた。そのニワトリは目に涙を浮かべている。彼の名札には、くっくどぅーどるどぅと書かれてあった。その他のニワトリは確か、こけこっこーと書かれてあった。一羽だけ名札も違う。
 その時、彼は、そのニワトリはたぶんオスだと思うので、彼はとするが、行進する列から徐々に歩みを遅くし、隊から離れていくかのような仕草を見せた。モウ、ケッコ、モウ、ケッコ、コッケ、コ、ナンテッテ、モウ、ケッコ。相変わらず変な鳴き方だった。
 しばらくすると場面が変わった。前に自転車の人が見えた。でも、それはガタイの彼ではなかった。どう見てもガタイはよくない。というよりも、この人は女性だな。そう確信した。肩から腰にかけての滑らかな曲線、そして、逆さのハートを思わせるようなサドルでのお尻。でも、服はガタイの彼みたいな…。そして、そのラブリーな雰囲気を醸し出している彼女は、僕の方を振り向いた。

 
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