No.1866

題名:うちの冷蔵庫
報告者:ダレナン

 なんとなくの沈黙を破って、僕は再び執筆することを決意した。なぜならば目の前にエイヒレがあったからだ。そのエイヒレはとてつもなく固く締めあげられ、歯で噛もうとすると、派手かもという意識となり、そうしてハデルという名の人がいたことを、ここで思い出した。
 そう、ここはロンドン。まだ見ぬロンドンの夜景に、今、そわそわしている。それにしても堅い。なんて固いんだこのエイヒレは。歯でかむことできへんがな。
 そうして、冷蔵庫に逢った、冷蔵庫で出逢った、そのエイヒレに、先に焼かれた跡がある。すなわち、きっとこれは妻が焼いたものだ。それをこっそりと頂いている。
 もう、どうでもいい内容を書き綴り、ここには何も魂はない。文明に、文面的に魂を込めることなんぞ、するかあほ。あほやでー、自分。
 目の入るところに、封の開いた、糖質ゼロ、プリン体ゼロがあった。その元となるレモンサワーは20歳からの飲み物であり、今日はキリンで攻めている。
 最近、9%か、8%で非常に悩む日々が続いている。その悩みをかき消す、いや、かみ消すかのように、ここらで、エイヒレが喉の奥を過ぎ、口から消化された。そうであっても、口の頬あたりがとめどなくキーンとしている。これはキリンサワーの影響なのか。口周りの筋の酷使か。それとも神過ぎたからなのか。
 神過ぎた。すげー、なんかすげー語句が出た。神過ぎた。
 神様。またも腹が減り始めています。キーボード的には隣通しのDとS。どうしましょう。そうしましょう。DとSでこうも違う。やっぱDSや。
 ここで再び冷蔵庫を覗いた。あった、エイヒレの他に、未確認プチティラミスが燃えた。
 食べすぎやん、自分。この前、何となく腹回りがタプンとして、やべーぞ、と思ったばかりやん。でも、すでにレモンサワーは飲んでええ感じになっとるし、プチティラミスにも手だそーとしとる。そういうことやなん。いや、間違えてきーたタイトル。タイトル。ちゃうちゃん。きーたタイトル。また、ちゃうやん。キー叩いとる。やろ。そうやろ。
 別にかまへんがな。打ち間違い。そんなこと、どーでもええやん。
 ふと机に置かれたプチティラミスを開ける。粉かかっとる。ココアや、これ。ココアの茶色や。
 そうして、禁断のゾーンへとスプーンを投入した。ティラミス特有の、クニューッとした感触、そして、かすかにプシュと泡立つような音がそこらに響く。そこらというよりも、耳に響いた。耳も欲している。欲している、この音を。投入したスプーンは、同時に、ココアの茶色から黄色へと中身を変色させた。
 なんか、文学的やん。この表現。
 その間、すでにスプーンの勢いは止まることを知らなかった。彼は一口、いかん、これではいかん、と思いつつも、手のスプーンが勝手にティラミスと口への往復に時間を費やす。どんどんとカップの中身がそがれ、いつの間にやらカップ壁面にうっすらとこびりついている黄色と茶色の甘さが、混在してハーモニーを醸し出している。終わった。プチティラミスが。そして、そのハーモニーは口の中、腹の中で歌っていた。あなた、食べ過ぎなんじゃない。そうよ、食べ過ぎよ、と…。きっと後で妻に怒られる。そうに違いない。
「わたしのエイヒレとティラミスどこなの…どこいったのよ?」
「うちの冷蔵庫は蒸発しやすいんだ。アルコールもティラミスも。きっとそうなんだ」

 
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