No.1864

題名:鎖に繋がれた世界
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1863の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 もう一度、一からやり直そう。自分なりに…と、こぶちゃんと約束した。しかし、結果的に死刑宣告となった。僕にはもう残されていない。こぶちゃん、ごめんね。そういう言葉しか、他に思いつかなかった。
 死刑執行の日。目の前には仰々しい椅子があった。そこに座るように促され、僕はじっと目を凝らす。執行人から僕の目にマスクが覆いかぶされる。じっとしている。じっと。
その後、首筋に強烈な電が走った。僕はふっと意識を失い、そのままうなだれ…た。

 その時、娘が僕の首筋にカニのハサミを突き当てていた。強烈な電にハッと目が覚めた。目の前にはニコニコと微笑んでいる妻の希子がいた。

希子:「のぶちゃん。随分、ぐっすり眠っていたね。疲れていた? いい夢見れた?」
僕:「うん、まあ…」
希子:「どんな夢だった?」
僕:「宇宙人と交信していたんだ…」
希子:「ふ~ん。相変わらず変な人…。でも、そんなのぶちゃん、大好きよ…。いつもありがと」 チュ

 妻は愛おしそうに僕にキスをしてくれた。僕は心から嬉しかった。そんな気持ちの妻との会話もさておき、相変わらず娘の望は、僕に面白がるようにカニのハサミを突き当てていた。

僕:「望。そんなことすると、痛いよ」
香奈:「きゃはは…」

 そのまま、望は手にカニを持ったまま、海辺に走っていった。この前、ようやく歩けるようになったかと思ったが、子供の成長は実に早いものだ。
 頭上からは太陽の光がサンサンと降り注ぎ、セブの海の、その波間にも、光がきらびやかに走っていた。
 もうすぐで家族とのバカンスが終わろうとしている。来週から、僕にはまたもや新たな会社のプロジェクトを任されている。ウェブ・コンテンツをAnalyzeし、トレンドがどうとかこうとかの。
 世の中は、結局、金と力で、Townを仕切るボスがいて、そして、言葉巧み騙しハメる Trapがあり、過去の痛み背負い向かう Jobがある。だから、僕もその日暮らし。そして、汚れていく両手。どうにもならない時間と空間の闇。これが、世の仕組み。それが、この世界で、この道に生まれた運命。Born This Way。
 ひたむきに走ってきた、結局はあっちの世界のJob。ここのとこ、これでいいのかと悩む日々が続いている。JobでのCreateももはやなく、僕の傍にはあの当時のときめくこぶちゃんはすでに死んでいた。金と力。言葉騙し。その日のJobに埋没し、そして、汚れる両手。あの芳醇な、かつての夢や希望が全くない鎖に繋がれた世界。僕の人生は、これでよかったのだろうか…。本当に、これでよかったのだろうか…。

 
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