No.1857

題名:もう一度この世界
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1856の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 研ぎ澄まされたかのように思える意識とは裏腹に、僕はすべての感受性を失っていた。ぼーっとして、暗闇の中で、忘我して佇んでいた。浮遊していた。こぶちゃんとの夢と希望にあふれたあの記憶も彼方に消失し、僕はこのまま消えてしまってもいい、そう思えた。
 僕という存在は、もはや意味をなさない。ここに居て何にも残せてはいない。
 僕は、もう。僕には、もう。本当に何もなかった。
 本当に何もないんだ。
 ただ、無暗に意識だけが混沌として、僕の傍を横切って、横切っては消失していた。

ラクダ・マこぶちゃん:「そう思えるのも無理はない、信吉。でも、まだ希望はある。まだ、あたいを愛してくれた信吉なら、希望はある。ほら、よく思い出してごらん。あの、あの時の感動を…。信吉。もう一度、よく思い出してごらん。きっと、大丈夫。信吉なら大丈夫。あたいが信じている」

僕:「でも、もう、僕には何にもないんだ。これっぽちの想像も、創造も」

ラクダ・マこぶちゃん:「そんなのは気にしなくていい。少しずつでも、少しずつ歩めばいいんだよ。そこに道がある限り、信吉ならきっと歩いていける。信吉なら…」

僕:「そうなの?」

ラクダ・マこぶちゃん:「そう信じて。あたいを信じて。きっと大丈夫だよ」

僕:「こぶちゃん」

ラクダ・マこぶちゃん:「大丈夫」

 僕はいつの間にか、葬ってしまったこぶちゃんに勇気づけられ、もう一度この世界を生きてみようと思った。こぶちゃんのおかげだ。

ラクダ・マこぶちゃん:「信吉らしくなったじゃない。それでいいのよ。それで。あたいは、これで思い残すことなく、あっちの世界へ行ける。信吉…」

僕:「こぶちゃん。ありがとう。こぶちゃんに逢えてよかった。別れはとっても寂しいけれど、僕は、こぶちゃんに逢えて、本当によかった」

 
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