No.1840

題名:いつもお世話になっております
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1839の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 しばらくしてドーム内の明るさに目が慣れてくると、地球の小さな草原のように、月の表面に所々に緑色の草らしきものが点在していたのが見えた。少し進んだ先には小道らしき分け目も見えた。さらに、その奥にドーム一帯にへばりつくかのようにいくつかの建物も見えた。一番大きな建物に目をやっているとツキオが、「あれが、Moon Town宇宙科学研究所やで」と教えてくれた。目を凝らすと、確かにそれらしき名称が看板として掲げられている。
 それにしてもきれいなところだった。見渡しても全くゴミ1つ落ちていない。これだけの広さを整美するのはさぞかし大変だろうな…。
 そうだ、ここに、Moon Townに動物園はあるのだろうか…。
 ふと僕は意識が変わった。15の夜、イーロン・ナーシ氏のMoon Town計画に心躍り、あの日の夜に夢見たひらめきを思い出したのだ。そこで、ツキオにMoon Town動物園のことを尋ねてみた。が、

ツキオ:「ねーな。でも、Moon Town植物園なら、第1ドーム内にあるで。古くて相当に荒れてるけど」

とのことであった。いささかがっかりした。やはりこのMoon Townは、僕が当時考えた計画通りの内容ではないらしい。フランコ・ハバド氏によって大きく計画が変更されたのだろう、きっと。
 その時、向こうから輝いている女性がすたすたと歩いてきた。近づいてくるその人は、袖にバッジをつけている。コンシェルジュ。ミニスカートをはいた美人。宇宙船の博物館の案内で見たキーコさんそのものだった。

コンシェルジュのキーコさん:「初めまして。ここからの第3ドームの案内は、私が担当します。Les Clé d’or de la Moon Townのキーコです」
ツキオ:「キーコちゃん。ハロー。ええ感じにかわいいのー。で、今日のスカートの中はどうなっとるんや…」

 覗こうとするツキオ。

ばしーん。キーコ:「ダメよ、ツキオくん、まだ、まだ、お預けよ…。覗いちゃ、ダーメ」
ツキオ:「そんなー、キーコちゃん、もう、わいは、我慢でけへんのや。キーコちゃんのことずっと好きなんや。大好きなんや」
キーコ:「ツキオくん、私も分かってるけど…、ダーメ。今はダーメ」

 その様子に、呆気に取られていると、コンシェルジュのキーコさんは僕の方に向きなおし、

キーコ:「あなたが、あのモモチ・ノブヨシさまですね。Moon Townのこぶちゃんブランドにはいつもお世話になっております」

 
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