No.1839

題名:意識が変わった
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1838の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 ツキオの提案で、取り調べは一端終了した。僕とツキオはMoon Townへと向かうことになった。ツキオは船内にいる他の搭乗員に声をかけ、宇宙船のエンジンを始動させた。
 静かの海には、僕の着陸船が、そこにぽつんと残されていた。ただ、始動した宇宙船は、その地点に向かうこともなく、音もなくくるりと軽やかに360°進路を変えると、着陸船と反対方向へ、たぶんそこにはMoon Townがあるはずと思しき進路へと動き始めた。その進路方向の窓を眺めていると、遠くから小さな光の点が集合しているのが見えた。
 それから、30、40分ほどしてからだろうか。目の前の荒涼とした月の表面に、こうこうと明かりがともるドームらしきものが月の表面に聳え立っているのが見え始めた。宇宙船が近づくにつれ、次第にそれらが大きく見えた。きっと、あれが、Moon Townだろうな…。
 近づくにつれ、その存在感は、僕の目にも明らかに異質な物体に見えた。真っ暗な中に、それらドームが光を放つ。月の表面で放っている妙な光、いや、奇妙な空間がそこに造られていた。

ぐおんぐおんぐおん…、

 宇宙船は、右から数えて3番目の最も大きなドームの入り口に辿り着いた。搭乗員は何かを告げると、赤信号が点滅から点灯へ変わり、ドームの一部が開いた。宇宙船はその中に吸い込まれていった。その後、しばらくすると、プシュ―と音がした。か、と思うと、宇宙船は完全にドーム内に包まれていた。

ツキオ:「Moon Townについたで。ここからは地球の環境とおんなじや。だから、君、ノブヨシくん、宇宙服を完全に脱いでしまってもええで」

ツキオにそう言われ、僕はすぐさま窮屈だった宇宙服をすべて脱ぎ、船外へ出て大きく深呼吸した。その時、そこは、地球の、緑いっぱいの森の中にいるような、新鮮な空気にあふれていた。周りには緑はない。でも、さわやかな森林浴に浸っているような…。

ツキオ:「どや、ええ空気やろ。わいは地球には行ったことねえけんども、今の地球よりもええ空気の環境やと思うで…。ここは…。たぶん」

 ツキオもそこですべての宇宙服を脱いだ。多少、やはり宇宙での、月での適応したその身体に違和を感じつつも、最初に感じたよりもずっと普通に見えた。指が6本あることを除けば、地球にもこんな身体の人がいたかもしれない。そう思いながら、ツキオをじっくりと眺めた。やっぱりもう違和感はない。{恥の上塗り の動画で、僕自身の成長していない成長を、半分人間ハルバー・メンシュといっていたツキオとその何か中途半端な気持ちを共有したからだろうか。僕は、彼に対する意識が変わったことを感じざるを得なかった。

 
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