No.1820

題名:湖底には
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1819の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 ベッドに横たわっていると、ダオッコ博士は軽快に指をならした。パチン。すると、またも上からあの機械の棒がしゅるしゅると降りてきた。上部からの降り方も前回に増して勢いがあるようにも思えた。
 額にぴったっとくっついたかと思うと、そこからあの触手も伸びていくような、そんな感じも再びする。その間、ダオッコ博士は、エアーディスプレイを懸命に凝視していた。

「いい感じ。ツキオくん、今日はとてもいい感じよ。シンクロ率93%。この前の67%に比べたら随分と改善されたみたい」

「どうもツキオくんの体内の血液が、半分解読しにくかったみたい。でも、今日はイケてるわ。イケてるー、とーっても。うふっ」

 ダオッコ博士はとても喜んでいた。半分解読しにくい…。半分人間ハルバー・メンシュ。そのことも思い出しながら、その触手になだめすかされるかのように、僕は次第に安堵し始めた。
 きっと今日はうまくいく。愛するキーコにまた逢える…。
 頭の中もきらきらと輝いてきた。

 果物は半分に割れ、そこから種が露わになる。

 幾分規則正しく、それでいて乱雑な種の配置。宇宙の法則。

 ドラゴンが翼を広げ、二人の心はドクンドクンと脈打つ。

 閃光が現れ、そのまばゆい光の中、ドラゴンが大きく羽ばたく。

 光ある水の中、白いドラゴンは大きく羽ばたいている。

 ここは湖…、湖の中…。
 僕はその光が湖から発せられていたことにようやく気づいた。湖底にはキーコが見えた。キーコが、僕の名を呼んでいる。僕の名を呼んでいる。僕の名を呼んでいた。

(ツキオ、私よ。こっちに来て…。もうどこにも、行かないで…。ツキオ、あなたを愛してる…)

 
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