No.1810

題名:あなたを待っている!
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1809の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 Moon Townで次第に増えていった犯罪は、主に食料に関するものであった。やはり人は食べていかないと生きてはいけない。新新時代のノアの箱舟が進行し始めた当初は、宇宙食も残されていた。しかし、第2世代以降は宇宙食もすでに在庫がなく、Amazonでも取り寄せることが難しくなっていた。当時すでに、フランコ・ハバド氏はMoon Townへの輸送を制限するようにと、各方面に訴えかけていたらしい。それは、自給自足が月の世界でどれだけ可能かを試されていたことにもなる。
 当時のハバド氏によれば、「魂の戦士よ。最高級の牛(ぎゅう)、豚、ニワトリといった動物たち、麦、米といった植物たち、そしてわずかの昆虫は、月の世界に新たな幸運をもたらすであろう。それを駆使する。そうしてあなたたち魂の戦士の働きによって、月の世界は大いなる発展を遂げるであろう。その時、あなたたちはいつしか宇宙の伝説になるのだ。なるのだ。なるんだジョー」と僕たちの先祖に、繰り返し、繰り返し、マインドをコントロールしていたようだった。月の砂でできたバックが、浮かんでは消え、浮かんでは消え、僕たちの先祖でもある魂の戦士は「俺らにゃ けものの血がさわぐ」1)として、「ぎらぎらと やるぞ! やるぞ! やるぞ! 俺らにゃ 闘う意地がある」と★くりかえししていた1)。当時に残されたデータによれば、Moon Townの人々は、完全にハバド氏の手玉に乗ってしまっていた感じであった。
 だが、マインドがコントロールされても、第2世代と第3世代の間に平和な秩序が崩れ、食糧難は着実にMoon Townに犯罪を増やすきっかけをもたらした。そこで、考えられた。その平和の秩序を元に戻すために生まれたのが、Moon Town自警団であった。地球の警察よりも規模が小さく、しかしながら、それは、Moon Townの平和の秩序を乱す抑止力になる。そう判断した上でのMoon Town自警団の募集であった。

{Moon Town自警団があなたを待っている!どうぞ、チャンスと冒険がいっぱいの希望の職種へ!}

 大々的に募集の広告も流れ始めた。じゃがいも工場で働いているとき、その放送が流れた。日々、つつがない暮らしをしていた僕にとって、その募集は魅力的だった。

僕は、月の世界になぜ生まれたのか? 地球でなぜ生まれなかったのか? 工場で働いている意味は何なのか? 僕は、こんなことをするためにこの世界で生まれたのか?

{Moon Town自警団があなたを待っている!どうぞ、チャンスと冒険がいっぱいの希望の職種へ!}

(思い切って、この世界に飛び込むのもいいかもしれない…)
 なんでも、Moon Town自警団はじゃかいも工場との併用が可能だった。むしろ斡旋されていた。今でいえば副業に相当するのかもしれない。そして、僕は、その可能性に賭け、決心した。

1) https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1130126211 (閲覧2020.8.21)

 
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