No.1774

題名:神秘なる啓示
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1773の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 幹部一同は、おーーーと感嘆しているも、中には反発的な態度をとる人もいたらしい。ただ、その後、僕を抱えて会社に復帰した後の、父の手腕がものすごかったとのことだ。だれも、その手腕には文句は言えなかったようだ。それは何かにとりつかれているかのように、どんどんと事業を拡大し、祖祖父から続くこの会社を一躍国際的な会社へと成長させたのも二代目の父のおかげだった。

「ありがたいこっちゃ」

 祖祖父のころから働いている紫雲さんは、よくそんな風につぶやいていた。もう紫雲さんはこの世にはいないが、僕が幼かったころ、会社でおんぶしてもらったのを覚えている。とても、大きな背中の持ち主だった。

 なぬ、祖祖父、曽祖父の間違いじゃないの。
 ここでそう思われる方もいるかもしれないので、あえて伝えたい。実は、百智家には二人の祖父がいる。その二人のうち、本当の祖父がどっちだかよく分からない。家系図に基づく一説によると、双子だったのじゃないだろうか。そんな記述もあった。だから祖祖父とダブる記述をあえてしている。とにかく謎だらけの家系。なぜなら、家の代々は、男性にしろ、女性にしろ、謎の出生が多かった。祖祖父の時代は、男性。双子だったのじゃないかと言われるその祖祖父。父の時代は、女性。父も僕と同じように、シャーマン的存在、恐山のいたこが母だという伝えがある。でも、実際のところ、父も、実の母の事を知らずに育っている。
 そして、伊辺留村のシャーマンの女性。それが本当の僕の母だとしたら、あまりにも奇妙な家系かもしれない。その奇妙さは、祖祖父から続いている我が社の社訓にも表れていた。

社訓:「あらゆる人に、神秘を与え」

 これを理解するまでに幼い頃の僕は、随分と時間がかかった。僕の育ての母は、家のペットの世話をしていた堀内さんの奥さんである越美さんだったが、彼女に聞いてもその社訓の本質は分からなかった。
 でも、ある時、僕はこれについて、ハッと理解できた出来事があった。それが、こぶちゃんとの出逢い。アラブ帰りの父に連れられ、船室に入ってこぶちゃんを見た時、僕の中で、僕自身の中で、新しい命が、どくんと脈打った。

目覚め。
僕の目覚め。
こぶちゃんから僕は啓示を受けたのだ。
神秘なる啓示。
それが10歳の春だった。

 
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