題名:Moon Town計画
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1770の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
こぶちゃんと一緒に寝るようになってから、ますますこぶちゃんと意思疎通が図れているよう気がした。こぶちゃんの鳴き声で、こぶちゃんが何を求めているのか、何がしたいのか、僕はすぐに分かるようになった。
一緒に過ごす。それだけで、お互いがよく理解できる。きっと、僕の未来の予想図は、こぶちゃんにも見えていたのだろう。月の砂漠を一緒に歩く予想図が。
こぶちゃんと僕との生活をしり目に、僕の父は順調に事業を拡大していった。祖祖父の時代は、まだ輸入・輸出が難しい時代で、事業の拡大の困難を極めたが、父の代に変わってから、たぶん、父にはもともとそのような素質があったのだろうか。3、4年であっという間に大きな会社へと成長した。このままいけば、きっと三代目は僕になる。でも、これだけ拡大した事業に対して何をすればよいのか正直なところ分からなかった。食品や雑貨だけでなく、精密機械などの産業関係の輸入・輸出も手掛け、海外にも相当に支社が多くなったある時、父に言われたことがある。
父:「信吉や。ラクダと遊ぶのもいいが、父さんとたまには一緒に仕事をしないか。きっと学べることが沢山あるぞ…」
いつもラクダと遊んでいる僕を見て、忙しい最中でも父は僕に頻繁に声をかけるようになった。15歳ぐらいのことだったろうか。
やっぱりゆくゆくは後を継がせたい。そんな思いが父にはあったのだろう。でも、僕は決してこぶちゃんと遊んでいるわけではなかった。こぶちゃんと宇宙へ旅立つ前に向けて、その夢を語り合っていたのだ。
こぶちゃん:「ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!」
そんな時、タイミングよく父の事業に声をかけてくれた人がいた。それが、当時、民間で宇宙事業を起こし始めたスペースZ社。スペースZ社の社長は、イロン・ナーシ氏。なんと、父の事業の手腕を見込んで、将来の月に建てる街(Moon Town計画)に、その街への輸入・輸出の段取りを引き受けてくれ、との話だった。その話を父から聞いて、僕は色めき立った。
僕:「こぶちゃんとの夢が実現する…」
その時から、僕は父の仕事も積極的に手伝うようになった。イロン・ナーシ氏とのやり取りも僕が引き受けた。そして、僕の提案にいつも彼はこう言った。
ナーシ氏:「ノブヨシ殿のその提案、異論なーし」